東京大学の小山隆太准教授と安藤めぐみ大学院生らの研究グループは、自閉症モデルマウスを用いて、自閉症の治療における運動の有効性を示した。
自閉症は社会性障害やコミュニケーション障害を主な症状とする神経発達障害だが、発症メカニズムの解明は不十分で根本的治療法も確立されていない。研究グループは自閉症モデルマウスを用いて、運動が自閉症様行動やシナプス変性に与える影響を調べた。
研究グループは、成体期自閉症モデルマウスを飼育ケージ内で1か月間、回し車による自発的な車輪運動をさせた。その後、行動試験を行うと社会性障害や常同行動などの自閉症様行動が改善された。
また、顆粒神経細胞と海馬CA3野の錐体神経細胞との間に形成されるシナプスに着目。成体期自閉症モデルマウスではシナプス密度が増加し、これが発達期の「シナプス刈り込み(不要なシナプスの除去)」不全に由来することが判明した。そこで、自閉症モデルマウスに運動をさせると、成体期のシナプス密度がコントロール群と同程度にまで低下した。
さらに、発達期の自閉症モデルマウスでは、マイクログリア(小膠細胞)によるシナプス貪食量(除去量)が減少することが分かった。そこで、マウスに運動をさせたところ、マイクログリアによるシナプス貪食量がコントロール群と同程度まで増加した。また、一部の顆粒神経細胞の活動上昇によりマイクログリアによるシナプス貪食が促進することも分かった。
今回の研究から、自閉症の発症・治療に対するマイクログリアの重要性が明らかとなった。今後、自閉症の発症メカニズムの解明や新規治療ターゲットの創出が期待されるとしている。
論文情報:【Cell Reports】Exercise reverses behavioral and synaptic abnormalities after maternal inflammation