京都大学の鄧昊洋博士後期課程学生と大塚敏之同教授は、実時間最適制御(モデル予測制御)を並列計算によって実行する高速アルゴリズムの開発に成功した。
制約条件の下で最適な動きを求める問題は最適制御問題と呼ばれる。自動運転や電力系統の安定化、化学反応の効率化など、あらゆる対象を巧みに動かす制御に応用できる。特に、時々刻々の状況に応じて最適制御問題を実時間で解き直しながら制御を行うモデル予測制御は、応用範囲の広い方法として研究が活発だ。しかし、複雑な問題は計算が膨大で時間がかかり、モデル予測制御の実現が困難だった。
モデル予測制御では、有限の未来の期間にわたる最適化を各時刻で実行する必要がある。しかし、長い未来の動きは初期状態に敏感で、未来の動きの全体的な最適化は困難だ。今回提案した手法は、未来の動きをいくつかの断片に分解し、断片ごとの最適化を並列計算により同時に実行する。その際、隣接する断片の影響を適切に考慮できるよう分解の仕方を工夫し、全体の最適化を達成しつつ計算の大幅な高速化に成功した。一般に、断片の数を増やすと計算時間は増えるが、提案手法の場合は複数の断片を同時に最適化できるため、計算時間の増加率が従来手法の4分の1未満となった。
この研究成果によって、近年発展しているマルチコアプロセッサの性能を最大限活用でき、安価なプロセッサを複数使用して計算効率の向上も可能になる。モデル予測制御の実装コストの削減が期待される。さらに、自動運転、ロボット制御、電力ネットワーク制御などの新分野への応用が可能になる。今後は、産業用アプリケーションのためのソフトウェア開発を予定しているという。
論文情報:【Automatica】A parallel Newton-type method for nonlinear model predictive control