信州大学医学部の研究グループは、就学年齢までに自閉スペクトラム症と診断された子どもの多くが1歳半健診で運動能力と社会的コミュニケーション能力の障害を指摘されていたことを見出し、1歳半健診が発達障害の早期診断に有効であることを明らかにした。
発達障害の一種である自閉スペクトラム症の有病率は、近年、世界的に増加しており、2014年の米国の調査では8歳児での有病率が1.68%と報告されている。予後改善のためには、早期発見と早期介入が重要だが、一般的なスクリーニングツールでは、2歳未満での診断が困難だという。
一方、長野県岡谷市では、1歳半健診において保健師が各児に対し丁寧なスクリーニングを行い、疑いのある児は信濃医療福祉センターの受診につなげることで、自閉スペクトラム症の早期発見に努めている。そこで本研究では、岡谷市と信濃医療福祉センターの協力を得て、同市での自閉スペクトラム症の累積発生率とリスクファクターを調査した。
その結果、2009年度から2011年度に出生し同市で1歳半健診を受けた全幼児1,067名のうち、就学までに自閉スペクトラム症と診断されたのは33名で、累積発生率は3.1%だった。この値は、これまでの研究報告の中で最も高いといい、1歳半健診で丁寧なスクリーニング体制を整えることによって、高い感度での診断が可能であることが示唆された。
また、後に自閉スペクトラム症と診断された児は、1歳半健診時の微細・粗大運動能力および社会的コミュニケーション能力が低い傾向にあることが判明した。つまり、自閉スペクトラム症の児は1歳半の時点ですでにこれらの発達が遅れている可能性があり、これらが自閉スペクトラム症を早期に予測する因子となりうることが示された。
本成果により今後、乳幼児健診を活用した自閉スペクトラム症の早期診断システム開発が期待される。