筋力が衰える遺伝性の難病・筋ジストロフィーの詳しい発症原因がリビトールリン酸と呼ばれる糖の合成障害であることを、神戸大学などの研究チームが世界で初めて突き止めました。筋ジストロフィーの治療法確立に大きな朗報で、論文は米国の電子版科学誌「セル・リポーツ」に掲載されました。

 研究チームに加わったのは、神戸大学大学院医学研究科の戸田達史教授、金川基講師、小林千浩准教授、東京都健康長寿医療センターの遠藤玉夫副所長、大阪府立母子保健総合医療センターの和田芳直研究所長ら。

 神戸大学によると、筋ジストロフィーにはさまざまなタイプがあり、日本人に多い・福山型先天性筋ジストロフィーはほとんど歩行不能の重症型で、治療法が見つかっていません。研究チームはこれまでに、患者の筋肉細胞の表面で細胞を維持する働きを持つとみられる糖の化合物・糖鎖に異常が生じることを突き止めていましたが、発症の仕組みは分かっていませんでした。

 そこで今回は、実験用の人の細胞を使い、糖鎖の構造や遺伝子の働きを詳しく分析しました。その結果、糖鎖に哺乳類で未確認だったリビトールリン酸が含まれ、福山型では遺伝子の異常により、この糖の基になる物質や糖鎖が作れなくなっていることが分かりました。
遺伝子操作で病気を再現した細胞にこの糖の基になる物質を与えたところ、糖鎖の異常が回復したことから、研究チームは進行を抑える治療法の開発につながる可能性があるとみています。

 戸田達史神戸大学教授は「これまで原因不明だった筋ジストロフィーが発症する仕組みが明らかになったことで、治療法開発に拍車がかかる」とのコメントを発表しています。

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