慶應義塾大学医学部、国立成育医療研究センター、横浜市立大学医学部などの共同研究チームは、先天性副腎低形成症を含む様々な全身症状を生じる新たな遺伝子疾患「MIRAGE(ミラージュ)症候群」を世界で初めて発見したと発表した。

 先天性副腎低形成症は、生命活動の維持に大切な副腎皮質ホルモンを欠乏する指定難病で、国内患者数は推定約1,000人。患者の約30%は原因不明であった。

 研究チームは、原因不明の先天性副腎低形成症患者24人のDNA分析により、11 人にSAMD9という遺伝子の異常を発見。11人の臨床症状には、副腎の異常以外にも造血異常、易感染性、成長障害、性腺症状、消化器症状が共通しており、未知の遺伝子疾患であることが判明。症状の頭文字にちなみ疾患名を「MIRAGE(ミラージュ)症候群」と提唱した。

 今回、培養細胞を用い、異常なSAMD9遺伝子を人工的に働かせると細胞増殖が強力に抑えられることが判明。その機構解明のため、患者細胞を分析すると、SAMD9遺伝子異常が細胞内の物質輸送機構のひとつであるエンドソーム系に異常を引き起こして細胞の状態不良を生じたという。このような疾患は類例がなく、MIRAGE症候群が臨床的・遺伝学的にもメカニズムの点でも新しい疾患であることがわかった。注目すべき点として、SAMD9遺伝子異常を持つ11人のうち2人が小児では極めてまれな骨髄異形成症候群を発症しており、異常SAMD9遺伝子が存在する7番染色体の欠失が関与したとしている。

 今回の研究で得られた知見はMIRAGE症候群の治療法開発に役立てられるほか、MIRAGE症候群によって引き起こされる部分症状(先天性副腎低形成症、骨髄異形成症候群など)の新規治療法開発への応用が期待されるとしている。

大学ジャーナルオンライン編集部

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