千葉大学は、スーパーコンピュータ「京」で可能になった超高解像度計算により、「太陽活動11年周期」を生み出すメカニズムを世界で初めて解明したことを発表しました。この成果は千葉大学大学院理学研究科の堀田英之特任助教、東京大学大学院理学系研究科の横山央明准教授らの国際研究グループによるもので、米科学誌「Science」で発表されました。
太陽には黒点という強磁場領域があり、その数は太陽の活動状況によって11年周期で変動しています。しかしそのメカニズムは明らかになっておらず「太陽最古の謎」と呼ばれていました。かつて1600年代、黒点がなかった70年ほどの期間に地球が寒冷化していたことも示唆されており、この謎の解明は地球環境を考える上でも急務とされています。
磁場は太陽内部の乱流によって生成されると考えられていますが、高度なカオス的運動をする乱流の中から、11年周期を作りだす秩序立った大規模磁場が生まれる過程までは解明されていません。今回、同研究グループは負荷軽減が図られた計算法「音速抑制法」を開発。「京」による超高解像度計算を行いました。
これまでは「乱流が高度になるほど大規模な磁場は作られない」とされてきました。今回の計算でも、ある程度の解像度までは、これまでの予測通りの結果が見られました。しかし、今回実現した超高解像度においては小スケールの磁場生成が非常に活発となり、小さいスケールの乱流運動のエネルギーを上回りました。これは「高解像度であるにもかかわらず、乱流が高度でなくなった」状態を指します。その結果、太陽のような高度に乱流が発達した状況でも秩序だった大スケールの流れのみが許されるようになり、大スケールの磁場の発達に成功したのです。
このメカニズムは実際の太陽でも働くはずとされ、太陽活動周期の問題解明に向けた基本的かつ重要なしくみが明らかになったといえます。今後は衛星を中心とした観測によって理論の詳細を確かめることで、太陽最古の謎の本格解決が期待されます。