フランスのパリにそれぞれ本社と本部を置く化粧品会社ロレアルとユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は、世界五大陸※から自然科学、数学、コンピューターサイエンスの分野で業績を挙げた5名の女性科学者を選出する「第23回ロレアルーユネスコ女性科学賞」を発表。日本からは東京大学工学系研究科化学生命工学専攻の野崎京子教授が受賞した。
同日発表されたユネスコ科学レポートによると、女性科学者の数は増えているものの、世界中の科学者の33%強にすぎず、特に自然科学、数学、コンピューターサイエンス、工学の分野での遅れが目立つ。また、現在、世界中の仕事の半分が2050年までに消滅するといわれており、ITやAIの進化によって消滅する仕事に就いている人々のなかの女性の割合は実に70%にのぼる。そのため、科学分野への女性の参画を後押しし、若い女性たちに科学者としてのキャリアを築くよう奨励することが非常に重要とされる。
ロレアル財団はユネスコとともに「世界は科学を必要としており、科学は女性を必要としている」という信念のもと、1998年に女性科学賞を設立。以来、世界117か国から117人の女性科学者を表彰し、3,500人以上の才能豊かな若手女性科学者(博士課程または博士研究員)の研究を奨励すべく奨学金を贈呈している。
2021年の女性科学賞では、アジア太平洋地域から東京大学工学系研究科化学生命工学専攻の野崎京子教授が選出された。受賞理由は、有機合成化学分野への先駆的かつ創造的貢献と産業革新にとっての研究成果の重要性。野崎教授の研究が、医学や持続可能な農業に有用な分子を大量生産するための、斬新で効率的で環境にやさしいプロセスの開発につながったことが評価された。
日本人の「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」受賞は、2000年岡崎恒子氏(名古屋大学名誉教授)、2005年米沢富美子氏(慶応大学名誉教授)、2009年小林昭子氏(日本大学文理学部化学科教授、東京大学名誉教授)、2013年黒田玲子氏(東京理科大学総合研究機構教授、東京大学名誉教授)、2014年稲葉カヨ氏(京都大学副学長、京都大学女性研究者支援センター長、京都大学大学院生命科学研究科教授)、2019年川合眞紀氏(自然科学研究機構分子科学研究所所長、東京大学名誉教授、日本化学会会長)に続いて7人目となる。(日本人受賞者の所属は受賞時)
※世界五大陸(北米/欧州/ラテンアメリカおよびカリブ海地域/アフリカ・アラブ諸国/アジア太平洋地域)