東京薬科大学の佐藤隆教授らは、虎の門病院の林伸和医師との共同研究により、ニキビの重症度に関わらず、ニキビ患者は不安感を抱いていること、また、不安度が高いニキビ患者ほど、病巣部の毛包内にカテコールアミン代謝物のノルメタネフリンが多いことを明らかにした。
ニキビ(痤瘡)は、男女を問わず、思春期頃から発症する皮膚疾患。ニキビの原因として男性ホルモン依存的な皮脂産生の増加が知られているが、思春期または思春期を過ぎてもニキビを発症する患者においてストレスを悪化因子の一つとして挙げる人も多い。事実、仕事や学業、人間関係などによる心理的ストレスはニキビの悪化と相関し、逆にニキビは患者の不安や抑うつ感を引き起こし、QOLを低下させる。しかし、ニキビ患者の病態と心理的ストレスとの関連性については科学的根拠が乏しい。
研究グループは今回、調査した全てのニキビ患者が重症度に関わらず不安感を抱いていることを明らかにした。そして、その不安度が高い患者ほどストレス応答機構の視床下部-交感神経-副腎髄質軸(SAM軸)が活性化していることを見出した。また、ニキビ病巣部の毛包内にはアドレナリンとノルアドレナリンおよびそれぞれの代謝産物であるメタネフリンとノルメタネフリンが存在することを初めて確認。中でもノルメタネフリン量は不安度の高い患者において有意に高値であり、SAM軸の活性化と正の相関性を示すことを明らかにした。
今回の研究成果は、ニキビ治療におけるストレス対策の必要性を示唆するとともに、ノルメタネフリンに着目したストレス性ニキビの診断法や治療法の開発に貢献するものと期待される。