ロボティクス学科の山縣広和准教授(当時:東京大学生産技術研究所特任研究員)が参加した研究チームは、東南極最大の氷河であるトッテン氷河沖の海域において、全自動水中ロボット(AUV:自律型海中ロボット)「MONACA(モナカ)」による海氷下での運行に世界で初めて成功した。
「MONACA」は国立極地研究所や東京大学、東京海洋大学との共同研究により、2022年度の第64次南極地域観測から運用を開始した。山縣准教授は約7年前に開発に参画し、設計、組み上げからプログラミングなど作業の大半を担当。失敗や挫折を経て改良を重ねた結果、自律航行アルゴリズムや高精度の位置推定、障害物回避などの最新技術を実装し、全自動で母船から離れて未知の氷下空間を安全に航行できるようになった。
2024年度の第66次南極地域観測ではリュツォ・ホルム湾とトッテン氷河沖において無索で片道200mの往復航行に成功した。距離としては決して長くはないものの、これが該当地域で世界初、かつ日本で初の極域AUV運用実績である。
現在は、2025年度に予定されている第67次南極地域観測に向けて、さらに長距離の無索自律航行を目指して改良を進めている。これにより今まで到達が困難だった氷海域や棚氷下部の調査領域が飛躍的に広がることが期待される。
山縣准教授は、「仲間と共に手掛けた仕事が意味を持ち始めることを嬉しく思う。在校生も遠い世界の話とせず、可能性ある領域と捉えてほしい」とコメントしている。