畿央大学大学院の信迫悟志教授らの研究チームは、両手を異なる動きで同時に使う「両手同時独立制御能力」が、5~13歳にかけて徐々に発達すること、および左右の手を協調させてひとつの目的を達成する「両手協調運動技能」とも有意に関連することを行動レベルで明らかにした。
両手同時独立制御能力は、「一方の手で定規を押さえながら他方の手で線を引く」、「一方の手で皿を保持しながら、他方の手でスプーンで食べ物をすくう」のように、日常的に不可欠な動作スキルである。しかしこれまで、この能力の子どもにおける発達過程は十分に解明されていなかった。
そこで本研究チームは、5~13歳の定型発達児150名を対象に、両手で同時に異なる描画を行う「両手結合(bimanual circles–lines coupling task:BC)課題」を実施し、両手同時独立制御能力の変化を調べた。通常、利き手で直線を描きながら、同時に非利き手で円を描画すると(両手条件)、利き手で描いた直線は、片手のみで直線を描く場合(片手条件)と比べて、非利き手の円運動の影響により楕円形に歪んでしまう。この歪みの程度を楕円化指数(Ovalization Index:OI)、両手条件と片手条件の間のOIの差分を両手干渉効果(Bimanual Coupling Effect: BCE)としてそれぞれ定量化した。OIとBCEが小さいほど、両手同時独立制御能力が高いことを示す。
年齢との関係性を確認した結果、OIは年齢とともに有意に低下していた。また、BCEも年齢と有意な負の相関を示した。このことから、5歳から13歳にかけて年齢の増加とともに両手同時独立制御能力が徐々に向上することが示された。
さらに、微細運動技能テストにより、両手を協調させて目的を達成する「両手協調運動技能」も評価した結果、BCEと有意に関連することがわかった。すなわち、両手同時独立制御能力を評価するBC課題が、両手協調運動技能を簡便かつ定量的に評価する手法としても有用である可能性が示された。
今後は、BC課題を特別な支援を必要とする子どもたちにも応用することで、運動機能のより的確な評価や、リハビリテーション、運動学習支援に役立つことが期待されるとしている。