筑波大学の山田洋一教授らの研究グループは、シャープペンシル芯の破断面をグラファイト化処理して、軸方向に配向したグラフェンエッジの簡便な作製に成功、そこから高品位な電子ビームを得た。グラフェンの尖った形状により、弱い電界で、極高真空ではない環境で安定した放出電流が得られた。

 グラフェンやカーボンナノチューブなどを用いた尖った形状のナノ炭素材料は、高品位電子ビームの発生源(電界放出電子源)としての応用が期待されている。しかし、ナノ炭素材料の配向や配置の制御が困難で、実用的な電子源への応用はあまり進んでいない。

 研究グループは、市販のシャープペンシル芯が、適度にグラファイトフレーク(黒鉛粉)を含有し、それらがもともと軸方向に配向している点に着目。シャープペンシル芯の破断面を、超高真空中での高温加熱により完全にグラファイト化することで、適度な密度で破断面に対して垂直配向したグラフェンのエッジの露出に成功した。

 破断面からの電界放出電子の分布を観察すると、グラフェンエッジからの電子放出に特徴的な、線状パターンが重なった「ドラゴンフライパターン」が見られた。また、その放射電流のエネルギースペクトルからの理論計算では、グラフェンの特徴的な電子状態の反映が示された。さらに、グラフェンの尖った形状や化学的安定性により、低い電界強度、また極高真空環境ではない条件下でも、安定した電子放出が可能と分かった。

 今回、ありふれた材料から簡便に、有用なナノ材料であるグラフェンエッジを得、高性能な電界電子放出材料として利用できることを示した。次世代電子顕微鏡等の要素技術としての利用が期待されるとしている。

論文情報:【Scientific Reports】Field Emission from Vertically Aligned Graphene Edges at the Apex of the Pencil Lead

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