京都府立医科大学大学院の笠原健矢氏(大学院生)らの研究グループと、東京理科大学大学院の市川陽大氏(大学院生)らの研究グループは、パナソニック健康保険組合と共同で、日本人における肥満を規定するBMIの基準について再検討し、肥満の基準はBMI 25kg/m2より大きく、疾患ごとに異なる値を設定するほうが好ましい可能性があることを明らかにした。

 肥満は個人の健康問題だけでなく、医療費の増大や生産性の低下など社会に大きな負担をもたらす。日本ではBMI 25kg/m2以上が肥満と定義されているが、これは生活習慣病有病率が2倍になるBMIを調査した約30年前のデータから規定された。一方、30年前より身長が5cm伸び、生活の欧米化も進んでいる現代日本人に同基準を用いることには議論の余地がある。

 研究グループは今回、健康診断を受診した約16万人の日本人を対象に、長期間の大規模追跡データを用いてBMIと生活習慣病発症リスクから肥満の基準となるBMI 25 kg/m2の妥当性を評価した。

 その結果、生活習慣病発症リスクが2倍となるようなBMI(kg/m2)は、糖尿病で24.6、高血圧症で26.8、高TG(トリグリセライド)血症で32.3、高LDL血症で25、低HDL血症で26.4となり、25 kg/m2をおおむね超えていた。糖尿病ではやや低い値(24.6)だったが、これは日本人の糖尿病患者に非肥満者が多く、血糖低下ホルモンであるインスリンの分泌能力が低い背景を示唆している可能性があるという。

 今回の研究成果より、日本における肥満の基準としてはBMI 25kg/m2より大きく、疾患ごとに異なる値を設定するほうが好ましい可能性があることが示唆されたとしている。

論文情報:【Metabolism】Time for a change? Threshold for obesity in contemporary Japanese population

東京理科大学

真の実力を養う実力主義。科学技術の創造による持続可能な世界の実現をめざして

東京理科大学は、1881年に「東京物理学講習所」として創立され、140年以上の歴史を経て、4キャンパス7学部33学科、7研究科31専攻を擁する、理工系総合大学に発展。「理学の普及を以て国運発展の基礎とする」という建学の精神と、真に実力を身につけた学生を卒業させ[…]

京都府立医科大学

豊かな人間性、プロフェッショナリズム、高度で専門的な知識・技能を修得

京都府立医科大学は、1872(明治5)年の設立以来150年を超える歴史を持ち、古い伝統を誇る公立医学部単科大学。「世界トップレベルの医学を地域へ」を理念とし、智力・独創的創造力・人間力のシナジーを基本に、優れた医療人・医学者を継続的に育成しています。革新的な基[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。