東北大学病院歯科麻酔疼痛管理科の田中志典講師らの研究グループは、抗生物質を投与し腸内細菌叢を除去したマウスにおいて、舌下免疫療法によるアレルギー抑制効果が失われることを発見した。

 近年、腸内細菌叢の乱れがアレルギー発症と関連することが明らかとなっている。舌下免疫療法は、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を少量ずつ舌下粘膜から吸収させることで、徐々にアレルギー反応を弱めていく治療法であるが、腸内細菌叢の働きとの関連性は不明だった。

 本研究グループは以前に、舌下免疫療法を行うと、顎下リンパ節でアレルギー抑制に働く制御性T細胞が誘導されることを明らかにしている。まず、この制御性T細胞が体内でどのように維持されるかを解明するため、腸間膜リンパ節に着目した。舌下免疫療法を施したマウスの腸間膜リンパ節を除去するとアレルギー抑制効果が失われること、腸間膜リンパ節から精製した制御性T細胞を別のマウスに移入すると、移入を受けたマウスでアレルギー反応が抑制されることから、舌下免疫療法により顎下リンパ節で誘導された制御性T細胞は、腸間膜リンパ節に移動して維持されると考えられた。

 腸間膜リンパ節の免疫細胞は腸内細菌叢の影響を受けることが知られている。そこで次に、舌下免疫療法を施したマウスに抗生物質を3週間投与し、腸内細菌叢を除去したところ、舌下免疫療法によるアレルギー抑制効果が失われることがわかった。また、このマウスの腸間膜リンパ節の制御性T細胞を別のマウスに移入しても、移入先マウスでアレルギー反応が抑制されないことを見出した。

 以上の結果から、舌下免疫療法でアレルギー抑制に働く制御性T細胞の維持に、腸内細菌叢が関与していることが示された。
一見無関係な腸内環境が、舌下免疫療法の治療効果に影響を与える可能性が示唆されたことから、今後はプロバイオティクスや機能性食品などの腸内環境を標的とした手法により、舌下免疫療法の治療効果を増強する手がかりとなることが期待される。

論文情報:【Allergology International】Gut microbiota contributes to the maintenance of sublingually induced regulatory T cells and tolerance in mice

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