応用脳科学コンソーシアムは、東京大学大学院、株式会社NTTデータ経営研究所、日本紙パルプ商事株式会社、日本漢字能力検定協会、株式会社日本能率協会マネジメントセンター、株式会社パイロットコーポレーションと共同で、筆記と読書の関係性を科学的に検証する調査を行い、その結果を発表した。

 今回、応用脳科学コンソーシアム(CAN)の共同プロジェクト「手書き価値研究会」は、全国の18~29歳の学生(大学院生と短大生を含む)、計1062名を対象に調査「書字と読書における使用メディアについてのアンケート」(2025年3月~8月)を行った。

 その結果、大学等の講義内容の記録について、記録しないと回答した人は全体の10%(107名)。また、日常的な予定の管理について、紙または電子機器に記入することがないと答えた人は全体の24%(255名)。さらに、日常で本や新聞・雑誌(SNSは除く)を読む時間に関して、いずれも普段読まないと回答した人は全体の20%(221名)だった。なお「本」は文学作品、専門書・教科書、実用書、マンガ、パンフレット・カタログ等を指す。

 紙の本を読むと回答した人の読書時間は1日あたり40分程度で、読まないと回答した人を含めると平均30分程度。専門書・教科書を紙または電子書籍で普段読むと回答した人は38%だった。一方、ブログや匿名掲示板、SNSなど個人発信の活字情報を読み物として読むと答えた人は26%で、1日あたり60分程度かけていた。

 日常で本や新聞・雑誌を読むことと、大学等の講義内容の記録や予定の管理、日常的なメモ、ブログ・SNS・日記やライフログ、手紙等など複数の場面で書くことの関連を調べると、読む人の方が多様な場面で書く傾向にあり、多様な場面で書く人の方が本や新聞・雑誌をより長時間読む傾向にあった。

 追加調査としてアンケート回答者の一部に読解力を評価する国語問題を解いてもらい、大学等の講義内容を記録する人・しない人の成績を比較したところ、前者のほうが成績が高かった。同じ参加者について、日常的に本や新聞・雑誌を読む人といずれも全く読まない人を比較すると、前者のほうが正答率が顕著に高かった。これにより日常的なメモの取り方や読書習慣は、文章の読解力や論理的な思考力に関係することが明確に示された。

 今回の知見は、書くことと読むことの累積効果を示しており、教育全般における言語力の強化や、生涯学習の重要性を強く訴えるものとしている。

参考:【東京大学大学院総合文化研究科・教養学部】【研究成果】デジタル時代の学生に対し読み書きの実態を調査 ~「書く」ことと「読む」ことの累積効果が明らかに~

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