2001年、学校法人薫英学園(1931年に薫英女子学院を創立)を母体に、1学部2学科体制でスタートした大阪人間科学大学。2016年からは理学療法学科を加えた1学部6学科4専攻で展開してきたが、学園創設90年、開学20年の節目を前に、2020年には、保健医療、心理の2学部を新設。保健医療分野には作業療法を加え3学部7学科体制を目指す。大規模な改革の背景、目指すところなどについて、田中保和学長にお聞きした。

 

AI時代、超高齢社会を前に、
あらためて対人援助の専門職業人を

 昨年は、人工知能(AI)の発達が人間の仕事にどのような影響を及ぼすかが、産業界のみならず、教育界も巻き込んで大きな議論を引き起こしました。この流れは今年も変わらず、議論はさらに加速し、かつ一層現実味を帯びたものになってくると予測されます。

 AIは人の仕事を奪うのか、あるいは人類はAIという道具を手に入れ、これまでより人間らしい生活が送れるようになるのか?いずれにしろ、こうした社会でますます大切になるのが、共感する心など人間らしい心の働きであり、仕事として求められるのは、医療・福祉、教育・保育などの対人援助職であることが多くの識者によって指摘されています。

 また、2025年には人口の4人に1人が75歳以上という超高齢社会となるわが国において、医療・福祉へのニーズは急速に高まっています。さらに注目される外国人労働者の受け入れにおいても、対人援助職はその中心的な職種であり、彼らをまとめ、指導育成できるリーダーの育成も急務です。

 一方で、対人援助職の多くについては、労働集約型と言った負のイメージが付きまといがちであることも否めません。これをいかに実態に即した明るいイメージに変えるか、希望に溢れ、働き甲斐を感じられる職業に変えていくか。これはまさに日本の課題であるとともに、我々のような対人援助職の養成を担う大学が、どれだけ優れた人材を育成、輩出できるかにもかかっているといっても過言ではないでしょう。

学部リニューアルの背景と狙い

 開学以来、建学の精神である「敬・信・愛」を展開した「自立と共生の心を培う人間教育」を教育理念に、主に対人援助にかかわる人材の育成に力を入れてきた本学ですが、2020年には、大幅な学部・学科体制の再構築(改革)を行うべく、目下、準備を進めています。

 これは一つに、対人援助に関する様々な学問分野の急激な高度化、専門化に対応するためです。医療・福祉分野はもとより、心理分野においても近年、公認心理師という心理職初の国家資格が誕生するなど、変化が加速しています。それと同時に、心理を学ぶ健康心理学科と医療心理学科臨床発達心理専攻の区分や、医療技術を学ぶ理学療法(理学療法学科)と言語聴覚(医療心理学科)とが異なる学科に配置されるなどの分かりにくさを解消することで、受験生やその保護者をはじめ、高校、地域、企業など、様々なステークホルダーに対して、対人援助の専門職業人の育成を通して、日本の課題に挑む本学の魅力と価値をより一層伝えていきたいという想いもあります。

 具体的には、理学療法士と言語聴覚士の養成課程を同じ学部に位置付け、新たに作業療法士の養成課程を加えてリハビリテーション系3分野をひとくくりとする保健医療学部(仮称)。これまでの健康心理と医療心理といった2つの心理領域を統合し、大学院と連携して公認心理師資格取得を視野に入れた心理学部(仮称)を開設します。《人間の日常生活の保障》を理念とする保健衛生学(リハビリテーション関係)と《人間と人間との共生》を理念とした心理学という2本の柱を立て、分野のアイデンティティを確立した上で、それぞれの教育・研究の高度化、専門化を目指すことにしたのです。

 従来からの人間科学部は、社会福祉学科に、医療福祉学科にあった介護福祉専攻を組み込んで、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士の福祉系三大国家資格に対応するカリキュラムを展開します。また、関西の大学としては唯一の視能訓練士養成課程は、リハビリテーションにも親和性はありますが、従来どおり、医療と福祉の両面からアプローチできるように医療福祉学科視能訓練専攻としました。

 この他、子ども保育学科では、保育士、幼稚園教諭に加えて、小学校教諭の免許も取得できるようになります。

対人援助職がヒーローになる日を目指して

 現在、大阪府教育委員会では、《入れる学校》から《入りたい学校》、《入ってよかった学校》選びを推進していますが、私たちはこれを大学にも当てはめ、《入ってよかった大学》を目指すべく、20年近く培ってきた面倒見の良さに一段と磨きをかけ、学生の《成長に、本気。》の大学を目指します。加えて地域貢献や地域との連携について、積極的にアピールするとともに、産学連携にも力を入れていきたいと考えています。

 教育面においては、1学部体制の下で培われてきた《チーム支援をリードできる人材》の育成に一層力を入れます。医療におけるチーム医療同様、心理職や福祉職、保育士や教員も含め、対人援助職も今や多職種連携の時代。本学ではすでに、一年後期に全員が、学科混在クラスで全学科のリレー講義を受講し、討論も行う「人間科学演習Ⅱ」を行っています。チーム医療教育では一般的になりつつある授業ですが、対人援助職養成ではまだまだ珍しく、本学の教育を特徴づけるものの一つであることから、3学部体制においても、「対人援助演習Ⅱ」としてさらに発展させていきたいと考えています。

 グローバル化や外国人受け入れへの対応では、2年前から希望者を募り、6日間に亘るベトナムでの介護実習「ベトナムハノイ・インターンシップ」を始めました。現地での実習を通じて、海外から受け入れる介護人材についての理解を深め、そのマネジメントに活かしてもらおうというものです。

 対人援助職に対する雇用条件の改善、職業としてのイメージアップに少しでも貢献すべく、『チーム支援を先導できる「対人援助の専門職業人」を育成し、日本の課題に挑戦する大学』を目指します。そのために次年度からの「新生5カ年計画(2019~2023)」の中で「未来科見学~近い未来、対人援助はヒーローになる~」をテーマとして、子どもたちの憧れとなるような、将来の夢となるような対人援助職を、全力で育てていきたいと考えています。

 

大阪人間科学大学
学長
田中 保和 先生
京都大学工学部卒業。京都大学大学院工学研究科工業化学専攻修了。工学修士。大阪府立高校教諭、大阪府立高校長、大阪府教育委員会教育監、近畿大学教授等を経て、2017年4月から現職。専門分野は教育行政、生徒・進路指導、学校経営、理科教育。

 

 

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大学ジャーナルオンライン編集部

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