ピンクの送迎バスに乗り込むと、「毎月1日はオシャレの日」のポスターが目に飛び込む。郊外の小高い丘にあるキャンパスと近隣の5つのターミナルをスクールバスで結び全学生を送迎するのは、昨年学園創立140周年を迎えた梅花女子大学(大阪府茨木市)。明治初期、大阪では川口外国人居留地(*1)に滞在していたキリスト教宣教師等によりいくつかの学校が設立されたが、同じキリスト教でも日本人の手で創設されたのが今日の梅花学園。

この歴史と伝統を引き継ぐ梅花女子大学は、10年ほど前には定員充足にも汲々としていたという。しかし、2010年に理事長に就任した小坂賢一郎氏による矢継ぎ早の改革が功を奏し、近年では関西の女子大学では勝ち組と称されるまでに至った。
小坂理事長とほぼ同時期に学長に就任した長澤修一氏、そして、卒業生で企画部長として学園の企画広報部門を牽引し、昨年から常務理事となった藤原美紀企画部長に梅花女子大学躍進の秘訣と今後の展望をうかがった。

(*1)1868年から1899年まで現在の大阪府大坂市西区川口1丁目北部・同2丁目北部に設けられていた。

 

1.「チャレンジ&エレガンス」-建学の精神を今にー

<小坂>
 近年、日本は、少子高齢化と相まって、東京一極集中が進み、地方は人口減少と共に疲弊し、これまで大切に守り育ててきた多様な伝統・文化が衰退するなど、日本社会の「画一化」の傾向は年々顕著になりつつあります。

 この「画一化」の方向は教育業界にも現れつつあるようです。「市場原理」に伴い、男子校女子校などの男女共学化や私立大学の大都市駅前への移転や同学部設置等の改革拡大などです。

 その結果、私立大学は、かつてのような独自色の強い、個性豊かな校風の大学が減りつつあり、多様な学生の育成が薄れつつあるように思われます。

 本来、私学は創立者の建学の精神に基づき、教育を行い、結果として多様な人物を社会に送り出すことを使命としているはずです。それだけに、本学は、創立者の思いを現代に生かすべく、本学の基盤である、キリスト教主義、女子大学、小規模大学そして茨木ガーデンキャンパス、これらの条件にこだわり、磨きをかけ、他大学とは全く違う個性ある大学を目指し、日々改革を進めております。

<長澤>
 まずは、建学の精神の根幹を成すキリスト教主義です。プロテスタント牧師でもある梅花学園の創立者の澤山保羅は、明治維新直後の混沌とした日本の将来を憂い、女性にキリスト教精神に基づく、愛の教育と知的教育を授けることが、日本の将来にとって、何より大切と考えました。

 以来141年。梅花学園は、創立者の愛唱の聖句「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」(マタイによる福音者7章12節)をスクールモットーとし、今日まで6万名を超える卒業生を社会に送り出してまいりました。

 今では、そのスクールモットーを「チャレンジ&エレガンス」というスローガンで表現しています。他者のため、問題発見、解決し且つ、キリスト教の品性と思いやりある美しい女性。積極的に社会に貢献する自立した女性の育成を目標としています。

<藤原>
 学生がキリスト教の愛の精神を感受するため、入学式に始まり、各式典はキリスト教の礼拝形式で行っています。また、全学生対象に毎週、チャペルで礼拝を行い、静かに自分自身を見つめる時間を持つのです。そして、毎年12月には、キャンパスで盛大にクリスマスイベントを行います。今では、多くの地域の人々が参加し、茨木市の名物となりつつあるようです。

写真左から、長澤学長、小坂理事長、藤原常務理事

2.「仕事力あるおしゃれな女性」-小規模大学の教育方針―

<藤原>
 より良い教育を行うため、まずは志願者、女子高生の確保です。女子高生の憧れの一つは、万事美しい大学です。そこで、自分が真に美しくなることです。

 一方、その保護者が期待するのは、女性の仕事につながる学部学科教育であると考えられます。そこで「仕事力あるオシャレな女性」というキャッチコピーが生まれました。

<長澤>
 この方針に基づくここ数年の改組改編により、現在、本学は4学部9学科(文化表現学部:情報メディア学科・日本文化学科・国際英語学科、心理こども学部:こども教育学科・心理学科、食文化学部:食文化学科・管理栄養学科、看護保健学部:看護学科・口腔保健学科)。3研究科(現代人間学研究科・文学研究科・看護保健学研究科)となりました。

 『全学部入学定員495名』の全国でも珍しい、小規模・多様学科の大学であります。大規模大学の1学科以下の学生数です。当然、専任教員一人当たりの学生数は少なく、全国平均 24.44名に対しわずか 14.24名であります。財政的にはけっして楽ではありませんが、徹底した費用対効果を追求することにより、現在は収支均衡となっています。

 また、多様な学問分野の各学科は、大学全体で、多様な研究分野の専任教員を揃えることになりました。その結果、全学生対象の教養科目(エレガンス科目)は、建学の精神を理解する専任教員が主に担う考えかたが可能となりました。真にエレガンスな女性を目指し、「聖書の世界」や現役アナウンサーによる「美しい日本語」、「バレエやダンス」等、本学特有の科目を設置しています。

 一方、各学部学科はチャレンジ科目と呼ぶ専門科目の改革を進めています。チャレンジ力のレベルアップ。問題を見出して解決していく力を磨くことにより、専門力を高めてほしいのです。そこで今、演習以外でも、アクティーブラーニングなど双方向型授業を多くの授業に取り入れています。一学科入学定員30名の学科など、超少人数の各学科だからこそ出来る教育。学生一人ひとりに合った、徹底した「オーダーメイド教育」を今後も追及していきたいと思っています。

 学生は皆、性格や考え方や価値観が違います。それだけに深く学生を理解し、学生一人ひとりの勉学意欲を喚起する教育をし、人としての成長を促さなければなりません。知識の伝達だけなら、大学以外でも学べるのですから。

<藤原>
 その他、女子学生が、生涯、社会で活躍する上で、資格や就職は重要です。専任教職員が中心となり、全学生がそれぞれの資格を習得するとともに、ミスマッチのない就職ができるよう、きめ細やかなサポートを行っています。

<小坂>
 いずれにしても、小規模大学ならではの「リベラルアーツプラス実学」教育の大学を目指し、本学の挑戦は続きます。

<長澤>
 学費の対価のメインである「教員」。その教員の研究力のレベルアップは欠かせません。そして、教育力です。その一環として、各自の取り組みを発表する「授業実践報告会」として、月一回、全学教授会の前に、順番に、全教員の前で、自分の授業を発表する機会を設けています。それぞれの授業の工夫が全教員で共有され、本学の教育内容が高度化することを願っています。

 また、学生に対しては、教育研究支援センターで、毎年1年次と3年次の学習力を調査し全教員の指導に生かしてもらっています。加えて、年に二回、教員が互いの授業を見る授業参観を行い、学生目線での感想を共有しています。

<小坂>
 本学は、小規模大学だけに、大学運営はコンパクトであります。リベラルアーツ教育を目指すため、教授会は全学教授会のみ。学部自治はありません。全教員が全学生の教養・専門教育の責任を担います。学長には、一学部長のつもりで大学全体の運営をするようにお願いしています。

 事務組織につきましては、組織の合理化の一環として、昨年度、学校法人の事務局長制度は廃止しました。現場の声が直接、経営責任を持つ常務理事会に届くようにし、スピード改革をするためです。おかげで各現場は意欲的に提案し実行するようになりました。

 その他、本学は小規模大学の特性を生かし、全学生対象の様々な教育活動を行っています。

3.グローバル・コミュニケーション・ヴィレッジ

<長澤>
 2018年度より、一般教養科目としての英語の授業の他に、全学生が自由に、気楽に、ネイティブ教員と英会話が出来る、グローバル・コミュニケーション・ヴィレッジがスタートしました。近い将来、全学生が英会話を楽しむことはもちろんのこと、この施設が国際交流の拠点となり、世界の文化交流にチャレンジ出来る学生を多く輩出する施設となることを期待しています。

4.産学連携

<藤原>
 教育効果を高めるため、「産学連携」を活発に行っています。全学生が早い段階で社会人・企業と交流し、社会で活躍する準備をするためです。最近、企業からの申し入れがひっきりなしに続き、社会からの注目も集まってきました。過去5年、155件を数えます。

 産学連携は一般的には研究室と企業が同じ分野が基本であります。しかし、本学の場合はそれにこだわらず、女性の「感性」を生かすような取り組みに特色があります。最近はどの企業も新しいアイデアを生むのに熱心であります。企業の方によりますと、男性との交流がある共学大学の女子学生のアイデアと、女子のみの女子大学の学生のアイデアは違うとのことです。女子大学の学生のアイデアはユニークなものが多いと重宝されています。

 理由は、男子のいる実社会と似た構造の、男女共学大学の女子学生は必然的に、男性の意見を多く取り入れているからではないでしょうか。産学連携関係では、本学はサテライトとして梅田のグランフロント大阪ナレッジキャピタルへ、開業時から参画しています。

 「技術と感性の融合」「知的創造・交流」「皆の力で未来を作る」「世界一の感動が生まれる」。これらのコンセプト、「THE Lab.みんなで世界一研究所」が本学の求めていた環境に合致したのであります。規模の小さい本学では、ほとんどすべての学生が産学連携を体験できるのも強みです。管理栄養学科のある学生は、企業から9件もアイデアを採用されています。彼女は、商品企画に関わることで自分の将来を見出すことができた、といっていたのが印象的でした。

<長澤>
 学生にとっては、貴重な社会経験の場です。実践力が身につき、向学心を引き出すことができます。就職にも役立つと思います。

<藤原>
 最近の事例です。カー用品販売大手のオートバックスセブンと共同で「ムギちゃんのパン」という絵本を製作しています。交通安全と車に乗ることで得られる楽しさ、ありがたみがテーマです。絵本は同社の店頭とウエブサイトで販売しています。売れ行きは順調で売り上げの一部は交通遺児募金に寄付されています。

5.文舞両道

<藤原>
 「チャレンジ&エレガンス」の代表格はチアリーディング部「レイダース」と梅花歌劇団「劇団この花」であります。
 『チアリーディングレイダース』
 部員は、北は北海道から、南は九州まで、全国から梅花女子大学の門をたたき、現在部員は50名を超えます(中高は69名)。戦績は過去24年、ジャパンカップで全国優勝6回など各大会で常に抜群の成績を上げています。学生たちはコーチをおかず、自分たちで考え、話し合って演技を組み立て練習に励んでいます。そして「元気」「勇気」「笑顔」をモットーに部員たちは、勉学とクラブを両立し、長年、梅花の顔としておおいに活躍してくれています。就職も企業から引っ張りだこです。

<長澤>
 昨年、学園創立140周年の記念式典では、レイダースをイメージし、英語の応援歌「チャレンジ&エレガンス」が誕生しました。学生や卒業生から好評です。

<藤原>
『梅花歌劇団、劇団この花』
 2016年に、梅花中学校・高等学校の舞台芸術専攻をベースに、梅花女子大学に梅花歌劇団が誕生しました。芸術系大学のミュージカル専攻や芸術学部とは全く違い、「看護保健学部」など既存の学部学科に所属しながら、舞台芸術を究めるのです。
 したがって、学問と歌劇を両立する、言わば「文舞両道」の学生を育成するのです。

 指導は、宝塚歌劇団や劇団四季の演出・振り付けを行っている著名な「謝 珠栄」客員教授はじめ一流の舞台人がおこないます。学生たちは、連日、厳しい練習を積み重ねることにより、プロ並みの本物の舞台を目指しています。練習の成果は学内での公演の他、各所で発表し、今や茨木市の名物となり、市の広報誌の表紙を飾るほどであります。

 劇団員の学生たちには、感性を磨き、表現力ある社会人となることを期待しています。例えば、口腔保健学科の学生が、ミュージカルのできる歯科衛生士として活躍してくれるなど、夢は膨らみます。

6.茨木ガーデンキャンパス ー都会に隣接したオアシスー

<小坂>
 理事長室に来られるお客様は皆さん、「美しいキャンパスですね」といっていただきます。私は、このキャンパスは最高に空気が澄んでいると申し上げると皆さん納得していただきます。それもそのはずです。周辺は緑一色です。近年、街中、駅前へキャンパス移転する大学が増えています。本学は逆です。川が流れ、クラシック音楽が流れ、花と緑溢れる、心癒される快適なキャンパス環境です。

 この美しいキャンパスを拠点とし、学生たちは学生同士・教職員他、様々な人々と「交流」することにより、日々「成長」します。今後、白い建物と花と緑を基調に、ヨーロッパ風のエレガントなキャンパスを目指し、さらに整備を進めたいと思っています。

<藤原>
 女子大学の良さの一つは「安全安心」な大学であると思います。本学は近隣5箇所のターミナルからキャンパス内まで、全学生を送迎しています。全国で、全学生対象にそこまでしているところはほとんどないと思います。毎日、片道約20分のバスは、公共交通などのマナーの向上の効果も生んでいます。おかげで、お客様の声を聞くと、学生が自然に挨拶をしてくれるなど、評判も良いようです。

<長澤>
 毎朝スクールバスを、心理学科の実習犬(スタンダードプードル犬、メス)「梅ちゃん」「花ちゃん」が学生を出迎えてくれます。一日のキャンパス生活が始まる風景です。

7.おわりに

<小坂>
 梅花学園が創立された明治初期の混乱していた時代と比べ、現在の日本は先進国となり、裕福な国となりました。しかし、内実は、少子高齢化、地方衰退、政治不信、家庭崩壊、外交問題等々、学園創立時とは違った意味で先行き不透明な時代を迎えていると言えます。

 それだけに、今こそ、日本の将来を背負う若い男性、女性の教育が大切と思います。現在、日本の大学の約8割を占める私立大学は、創立者の建学の精神に基づき、様々なスローガンにより「理想の人物」の養成をうたっています。ただ、冒頭に申し上げたように、近年、「市場原理」の関係もあり、男女共学の各私立大学は個性や特色がなくなりつつあるように思われます。

 それに対して、女子大学は理想の人物ではなく、「理想の女性」の育成を建学の精神としています( 一方、理想の男性の育成を建学の精神としている男子学生のみの大学はありません)。今後も、理想の男性を写す鏡として、私は、理想の女性を追求する大学が必要と考えます。

 梅花女子大学はキリスト教精神に基づく、チャレンジ精神溢れるエレガンスな女性、真に美しく輝く女性の育成を目指します。女性が美しく輝けば、対する男性も輝き、日本社会も発展するはずです。

<長澤>
 「チャレンジ&エレガンス」。まずは、教職員です。教職員が言葉だけでなく、男性として、女性として、学生たちに手本を示さなければなりません。全教職員が、理想の女子大学を目指し、楽しく仕事に励み、日々成長しなければなりません。
 学生にとって、大学時代は「夢」を追い求める一生で一番大切な時期です。すべての学生が「夢」を追い、楽しく充実した大学生活を送ってくれることを願っています。

 

 

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大学ジャーナルオンライン編集部

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