大学入学共通テストで予定されていた英語4技能の民間検定試験の活用と数学・国語の記述式問題の実施が見送られたことで、大学入試改革の二本柱が折れ、振り出しに戻ったとする論調が各メディアで目立ちます。さらには新たに行われる「大学入学共通テスト」の名称を大学入試センター試験に戻せという話まで出ています。しかし、振り出しに戻ってはいないのです。2021年度入試は確実に変わります。
「英語」と「記述」以外でも制度変更が多い
昨年11月、大学入学共通テストで予定されていた民間の英語検定試験の活用見送りの発表があり、12月には、数学と国語で実施が予定されていた記述式問題の導入も見送られました。各メディアでは、大学入試改革が頓挫して、振り出しに戻ったという論調が主流です。2つの大きな制度変更が実施されないため、二本柱が折れたという表現は正しいでしょう。でも大学入試改革の”柱”は二本だけではないのです。
高大接続改革の中でも大学入試改革の制度変更は、大きくは3つありました。共通テストの英語を4技能評価へ転換すること、共通テストに記述式問題を導入すること、はそのうちの2つです。そして、もう1つは、共通テストではなく、各大学が個別に行う個別試験に新たなルールを導入することです。そこでのポイントは、①AO入試・推薦入試で小論文、プレゼンテーション、教科・科目に係るテスト、共通テスト等のうちいずれかの活用を必須化すること、②調査書の記載内容を改善すること、③出願時期をAO入試は8月以降から9月以降に変更し、合格発表時期をAO入試は11月以降、推薦入試は12月以降に設定すること、の3つです。
個別試験の改革の実施は見送られてはいません。そのため現在、各大学、高校は対応のための準備を進めています。特に「②調査書の記載内容を改善すること」に伴い、学力の3要素のうち「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を受験者数の多い一般入試で評価するよう求められたことは、大学、高校双方にとって悩ましい問題でした。余談ですが、この「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」が長いため、「主体性等」と省略して記されることもあり、多くの人が評価する対象を「主体性」だと誤解しています。評価の対象は正しくは「学ぶ態度」です。この「主体性等」について、次期学習指導要領では「学びに向かう力・人間性等」としていることも誤解をさらに深めています。ただ、この「主体性等」の一般入試における評価は、実務的に無理があるため、一部の大学が調査書や入学希望理由書などを点数化する以外は、ほぼ形骸化すると見込まれています。
上記のように3つめの柱の個別試験の改革は、着実に進行しており、さらに“折れた”と言われる共通テストですが出題傾向が大きく変わります。
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