一部の国公立大学では意外に低い入学率
<国公立大抜粋>を見ると個別の大学の状況が確認できます。国立大学では北見工業大学は半数近くが合格しても入学手続きをしていません。他大学に進学したか、予備校などに行っているものと推測できます。また、茨城大、宇都宮大、山梨大など首都圏に比較的近い大学で入学率が低い傾向が見られるほか、意外ですが横浜国立大、埼玉大など首都圏の有力大学も国立大学の中では入学率が低いことが分かります。都市部には伝統のある有力私立大学がひしめいています。本来であれば価格競争力がある、つまり授業料が圧倒的に安い国立大学を選ぶことが多いと思われますが、一定程度、私立大学を選ぶケースがあるということです。滋賀大、京都工芸繊維大なども都市部に近く、こうした影響によるものと思われます。
なお、公立大学の入学率が低いのは、大学入学共通テストで課される科目数が3~4教科の大学が多く、私立大学専願者も併願者しやすいことや中期日程を実施している大学が多いためと考えられます。中期日程は前期日程、後期日程の両方と併願ができます。もちろん前期日程で合格して入学手続きをすれば、中期日程の合格者対象者からは除外されますが、後期日程とのダブル合格者は合否結果が出てから事後選択的に選ぶことができます。このほか新潟県立大学や国際教養大学は、他の国公立大学とは異なる入試日程で実施しているため、入学率が低くなっています。こうして見ると公立大学の入試の仕組みは、国立大学と私立大学のいいとこ取りをしているようにも見えます。
受験生に有利なドミノ倒しの受験構造になる可能性も?
私立大学、公立大学ともに近隣地域にある国立大学の入試方法変更の影響も受けやすいので、同じ県内の国立大学に新学部が設置された時などは入学率に必ず変化があります。前述のように2022年度入試でも、いくつかの国立大学で改組や新学部設置の動きが見られます。新しい学部が設置されるとその募集人員分の合格者数が増えます。そうした国公立大学と併願者の多い私立大学は、それを見越して合格者数を例年よりも多く発表する可能性があります。特に2021年度入試では多くの私立大学で入学率が低下したケースが見られましたので、そのこともあって2022年度入試では、例年よりも合格者数を多くする私立大学も増えると見られます。それが都市部の場合、有力私立大学に対して劣勢な国立大学は、それを勘案して例年より合格者を多くすることも考えられます。ドミノ倒しのようですが、こうなると受験生にとってはかなり有り難い受験構造になってきます。
さらに、受験生にとって有利な点は、言うまでもなく大学志願者の実人数が減少していることです。そのため、地域あるいは学部系統によっては国立大学の入試のハードルがかなり下がってきています。その影響が周辺の大学に波及することで、その地域の入試全体のハードルが下がります。仮に来年の大学入学共通テストの平均点が下がり、目標としていた点数に届かなかったとしても、特定の難関大を目指している場合は別として、受験生にとって道が開かれる可能性が少しと見えてきています。
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