令和2年度文部科学省事業
「大学による地方創生人材教育プログラム構築事業」キックオフシンポジウム
文部科学省事業「大学による地方創生人材教育プログラム構築事業(事業通称名:COC+R)」のキックオフシンポジウムが令和3年2月20日、オンライン形式にて開催されました。シンポジウムでは「就職から創職へ〜地方大学だからこそ挑戦できるこれからの人材育成とは〜」をテーマに、基調講演やキーノート分科会を通じ、人生100年時代、COVID-19等による社会構造の変化を見据え、魅力ある地域への変革と持続的な成長に向け、今後さらに重要となる「人材育成」に焦点を当て、議論を交わしました。
『「と」の力』を生かし、新たな挑戦を
事業コンセプトと選定4大学の事業を説明するプロモーションビデオが上映された後、主催校を代表して信州大学の濱田州博学長が開会のあいさつをしました。
濵田学長は今年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公で、日本資本主義の父を呼ばれる渋沢栄一の玄孫である渋澤健氏の著作「渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え」から『「と」の力』について紹介しました。これは、一見すると矛盾するものを組み合わせることで化学反応が起こり、それまで考えつかなかったような新しいものを生み出す力のことで、濵田学長は「本事業でも出会いや遭遇から「と」の力を発揮し、新たな挑戦をしていきたい」と期待を込めました。
来賓としてあいさつしたのは文部科学省総合教育政策局地域学習推進課長の横井理夫氏です。横井氏はCOC+Rの狙いや選定4大学の事業内容について説明し、「事業の目的は学卒者の地元定着と地域活性化の推進であり、地域に求められる人材の育成機関としての大学の機能強化を図っていきたい」と述べました。
その大学ならではの価値の明確化と浸透が不可欠
続いて行われた基調講演では、リクルート進学総研所長・リクルート「カレッジマネジメント」編集長の小林浩氏が「これからの魅力ある地方大学とは?」と題し、魅力ある多様な人材育成に向け、地方大学が果たすべき役割と挑戦すべきテーマについて論点を提示しました。
小林氏は選ばれる地方大学になるためのポイントとして2つを挙げました。1つは大学の存在価値(本学ならではの価値)の明確化です。30年前に比べて、18歳人口が4割減り、大学数が約1.5倍に増え、大学進学率が2倍以上の54%となる中、現在の大学はどの学部で何を学んでいるか分からない、卒業時に何が身についているのかが分からないといった声も多く聞かれます。そこで重要になるのが大学の独自性(魅力)を明確化し、相手に分かりやすくメッセージすることです。小林氏は学外に情報を発信するアウターコミュニケーションはもちろん、存在価値を社会へ浸透するには、学内向けのインナーコミュニケーションも忘れてはいけないと指摘しました。
また、特に地方の国立大学の場合は、増え続ける公立大学との差別化が必要で、学費が安いことだけでなく、教育・研究面での強みと特徴づくりに力を入れるべきと述べました。
育成する人材像を1分で語れる端的なストーリーを
小林氏が2つ目のポイントとして挙げたのが、教育・研究・人材育成に関する地域との連携です。まず強調したのが、卒業後の活躍がイメージできる大学づくりでした。また、産・官・金と連携し、地域における産業クラスターの形成についても言及しました。かつての鉄鋼産業都市から大学の貢献により医療産業都市に生まれ変わった米ピッツバーグなどの事例を紹介し、「今あるものにとどまらず将来を見据えた産業創出に力を発揮してほしい。1校だけで難しければ、複数の大学の強みを生かした“地域連携プラットフォーム”の構築にも取り組む手法もある」と示唆しました。
さらに小林氏は、今後求められるのは「高大社接続改革」であると述べました。その地域ならではの価値や地方創生を担う人材を育てるため、必要とされる人材像を社会と大学が共有するほか、高校のカリキュラム変更に合わせた大学入試改革と受け入れ体制整備が不可欠としました。そのためにも、「本学はこんな人材を育成しているという“ならではの価値”の浸透に向け、1分で語ることのできる端的なストーリーを作るようにしてほしい」と提言しました。
シンポジウムをヒントにプログラムの充実へ
その後、4つのキーノート分科会(詳細は別項)を開催しました。各分科会では「育成すべき人材像」についてさまざまな視点を提示し、大学や企業、地域の関係者らが議論を深め、その内容をグラフィックレコーディングを使って共有しました。
これを受け、総評した富山大学の齋藤滋学長は「シンポジウムを通じて大学の教育をいかに充実させ、面白くするかに加え、大学と地域の行政や企業が一緒に人材を育成することの意義が確認できた。高校までの授業と違い、大学の講義は自分自身を磨いて美しくするためのもの。本事業を通して企業と一緒に大学の教育のあり方を再検討し、10年後、20年後に地域で、そして世界で活躍できる人材を育てていきたい」と意欲を示しました。
閉会のあいさつに立った金沢大学の山崎光悦学長は「学生に自分の未来を描かせ、そのために必要な自分磨きのための場所と手段を提供することが大学のミッションだとあらためて感じた。また、日本の現状を突破してくれるような人材の育成も重要だ。今回のプロジェクトに関わる先生や企業の皆様には今回のシンポジウムの内容をかみしめ、プログラムの中身を濃く作り上げてほしい」と呼び掛け、シンポジウムを締めくくりました。
基調講演の動画を視聴したい方は下記からお進みください。
COR+Rキックオフシンポジウム 事業説明、基調講演