次代の人・社会を動かす熱意と戦略データが地方創生の原動力に
全15回の講義を経て、「信州大学と塩尻市、双方にとってさまざまな気付きと学びがあった」と話すのは、塩尻市地域づくり課の上村英文さんだ。地縁コミュニティという、学生にとって当事者意識を感じにくいテーマを取り扱う難しさは感じたものの、だからこそ学生ならではの面白い発想があったと語る。なかでもSNSを活用する情報発信はいかにも大学生らしい視点で、地域コミュニティや自治会という、ある種クローズドな組織に若者を取り込むための新たな視点を得たという。
加えて、「行政もエビデンスに基づいた政策立案を推進していかなければいけない時代のなかで、大学との共同研究でロジックモデルを修得できたことは意義深かった」と話すのは、企画課の古屋貴大さんだ。今回の共同研究を土台に、塩尻市では今後、地縁コミュニティのみならず福祉や教育など縦割りの垣根を超え、行政・住民・事業者などが連携した事業展開で「地域共生社会」の実現を目指していくという。新たなフェーズへの発展である。
一方、「ストラテジー・デザイン人材養成コース」としては、2年次以降はロジックモデルを念頭に置きながら、データサイエンスのスキルを習得してアビリティを身につけ、3年次には地方自治体や団体、企業等のインターンシップに参加することで、実務から実践力を学んでいく。その成果を4年次の卒業論文や就職活動などに生かしていくことが最終的な着地点である。「学生が興味・関心が持てるテーマ設定や、一人一人が意見を持てる環境づくりを引き続き構築しつつ、今後も学生に楽しんでもらえる授業の構成は大事にしていきたい」と西尾助教。学生の内なる原動力であるハートドリブンの連携力や突破力と、地域や人を中心に据えたデータオリエンテッドの思考力を養い、社会に関わり続ける力、未来社会を見据えた創造性、あふれる推進力を培うことで、次の時代を創造していくコアな人材に必要なリテラシーを持った人材の育成を目指していく。
スタートを切ったばかりの「ENGINE」プログラムと「ストラテジー・デザイン人材養成コース」。広域的な地方創生の源となる、時代や環境変化に適応した思考やアクションが取れる人材育成は始まったばかりだ。さらなる挑戦と進化に期待したい。