医学から芸術まで15学部49学科を擁する総合大学として、西日本最大級の規模を誇る近畿大学。建学の精神に掲げた「実学教育と人格の陶冶」に基づいた教育・研究を展開しており、57万人を超える卒業生を輩出してきた。「近大DX」と銘打って、学内事務手続の完全ペーパーレス化を実現するなど、先進的な取り組みを行なっていることでも知られている。しかし、OB/OG情報の提供においては紙ベースでの管理を行なっており、ペーパーレス化への対応が急務であった。このような状況のなか、近畿大学が大学公認OB/OG訪問サービスとして「ビズリーチ・キャンパス」を導入したのは、2022年10月のこと。キャリアセンターの木地平事務部長、坂野課長、長尾主任に、導入に至る道のりと効果についてお話いただいた。


学生全員が主体的にキャリアを形成していけるよう、早期からさまざまなプログラムを提供

まずは、近畿大学のキャリア教育に対する方針と取り組みについて、キャリアセンターの木地平浩次事務部長に話を伺った。

「本学のキャリアセンターでは、『学生一人ひとりの希望に沿った就職・進路』を実現できるよう、1年次からキャリア支援プログラムを数多く揃えています。なかでも重視しているのが『一人も脱落することなく、全員が望む進路に繋げていける支援』の実践です」

2015年にスタートしたTSUNAGUプロジェクトの一環である「キャリアアシスタント制度」では、卒業後の進路が未決定の学生を対象に近畿大学の若手職員が個別に支援をする近大独自の支援プログラムを展開。加えて、有志の内定者による「就職活動支援グループAdvice and Sharing Knowledge about Job Hunting(以下・ASK)」が、実体験にもとづいた支援プログラムを企画・運営している。

※TSUNAGUプロジェクト:卒業後の進路が未決定の学生を対象に本学の若手職員が支援する近大独自の支援プログラム。求人の紹介や学内の就職イベントの案内など、全教職員が一体となって、学生をサポート

このように、学生一人ひとりに対してきめ細やかな支援を行ってきたが、OB/OG情報の提供に関しては課題が多かった。

「これまでは、キャリアセンターの窓口に来てOB/OG情報の提供を申し出た学生に対して、職員がOB/OGファイルから学生の希望に該当する卒業生を抽出・提供する方法をとっていました。しかしコロナ禍によって授業が対面からオンラインに変更。学生がキャンパスに来る機会が減り、OB/OG情報の提供が難しくなってきたのです」(木地平事務部長)

加えて、情報管理の負担も大きな課題であった。木地平事務部長は「卒業生57万人全員がOB/OGとして登録しているわけではありませんが、それでも膨大な人数になります。また、卒業生一人ひとりの就職後のキャリアを更新することが非常に難しい状況にありました」と話す。近畿大学の卒業生によって運営されている校友会組織もOB/OG情報を管理しているが、キャリアセンターと校友会との連携が進んでいない点も課題であった。

そこでキャリアセンターが注目したのが、OB/OG訪問サービスを提供しているビズリーチ・キャンパスだ。OB/OG情報のペーパーレス化を喫緊の課題と捉えて、ビズリーチ・キャンパスに問い合わせを行い、正式な導入に至ったと語る。(坂野裕一課長)

学生のキャリア支援に取り組むキャリアセンターの坂野裕一課長、木地平浩次事務部長、長尾明来士主任。(写真左から)

対面による「就職活動決起大会」を3年ぶりに開催。200名以上の学生が、ビズリーチ・キャンパスに登録

ピズリーチ・キャンパス導入の決め手に関して、木地平事務部長は次のように語る。

「ビズリーチ・キャンパスが情報を一元管理し、マッチングやOB/OG訪問をオンライン上で行えるため、学生にとっても、またキャリアセンターにとっても大幅な負担の軽減になります。安全面や個人情報の管理が気がかりでしたが、OB/OG訪問の依頼も学生からのアプローチに限定し、メッセージのやりとりを24時間監視するなど、厳しいガイドラインを敷いています。学生が安全に利用できる仕組みだと感じました」(木地平事務部長)

内定者(プレOB/OG)訪問が可能な点も高評価のポイントであった。「これまでも、ASKが中心となって内定者による支援を行なってきた本学にとって、プレOB/OG訪問ができる点は導入の大きな決め手となりました」

こうして近畿大学は2022年10月に、大学公認OB/OG訪問サービスとして「ビズリーチ・キャンパス」を導入。これに続けて就職活動生を激励する「就職活動決起大会」を開催した。

「コロナ禍でオンライン開催が続きましたが、2022年は3年ぶりに対面での開催となりました。約700人の就活生が会場に集結し、就職活動への思いを宣言。会場内にビズリーチ・キャンパスのブースを設置して登録を促したところ、200名以上が登録してくれました」(長尾主任)

内定者やOB/OGも会場に招き、学生と直接話す機会を設けたのも功を奏した。双方の壁がなくなり、学生が前向きにOB/OG訪問を捉え、主体的に就職活動を行うようになったからだ。

「近年、就職活動が早期化しており、本学でも低学年次からの支援に力を入れています。ビズリーチ・キャンパスの導入により、早い段階から卒業生や内定者とつながりを持てるようになります。卒業生の多様なキャリアを知ることで、本学の学生は社会への理解が深まり、社会人基礎力を育むことができるでしょう」と、導入のメリットを語ってくれた。(坂野課長)

「厳格なガイドラインに則ってセキュリティ対策を講じており、安全面においても信頼できるサービスだと感じました」(木地平事務部長)

OB/OGと継続的な接点を築き、多様なキャリアを知る機会を提供できる

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大学ジャーナルオンライン編集部

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