創設以来、家政学を中心に教育を行ってきた同大学が、近年、デジタル教育に積極的に乗り出している。直近では、国内の大学で初めてAIアバターをオープンキャンパスに導入し、話題となった。2022年には「デジタル・データサイエンス教育プログラム」のアップデートを図り、文部科学省から数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(以降、MDASH)のリテラシーレベルに認定。2026年には、新学部「AIライフデザイン学部(仮称・設置構想中)」の開設を予定している。「もはや、デジタル教育は理系大学だけのものでなく、時代の変化に合わせた教育を行うことが大学の責任」と語る、全学教育センター・センター長の鬘谷要教授に話を伺った。

 

全学共通の「デジタル・データサイエンス教育プログラム」で、
社会が求めるデジタルスキルを基礎から学ぶ

「背景には、社会がデータサイエンス関連の教育を受けた人材を強く求めるようになったことがあげられます。日本国内では時代に即応できるデジタルスキルを持つ人材が圧倒的に不足しており、もはや、デジタル教育は理系大学だけのものではありません」

そう話すのは、MDASH対応のカリキュラム作成にかかわった全学教育センター・センター長の鬘谷要教授だ。社会の要請を受け、以前から行われていた情報・パソコン関連の科目をもとに、MDASHのリテラシーレベルに適合するようアップデートを図ったという。

例えば、『パソコンの基礎と応用』の授業では、従来からの目標である「仕事でつかえる実務的なパソコンスキルを身につける」ことに加え、AIに関する講義やExcel VBAやScratchでのプログラミング実習にも取り組む。「例えば、現代社会で高度に利用されているコンピュータシミュレーションは重要な技術のひとつ。講義では、さまざまな事例を紹介することで、学生たちはスーパーコンピュータがどのように生活に役立っているのかを実感できます」

また、共通総合科目『数理と発想』では、数学が実生活でどのように使われるのかを学ぶ。例えば、高速道路で車のハンドルを切る際に使える数学や、カメラのピントをあわせる計算などだ。「数学が好きになれない一因に、高校までの数学が『作られた問題を解くこと』が目的となっていて、何の役に立つのか分からないことが挙げられます。本来、数学は、土地の分割や財産分与など、身近な問題を解決する実用的な手法として発展してきたもの。まずは高校までとは違う数学の話をすることで、分野そのものに興味を持ってもらおうと考えています。ですから、高校までの数学の成績は問いません」

「デジタル・データサイエンス教育プログラム」は、全学科の学生が履修可能。「データサイエンスや AIについて興味を広げて欲しい」と鬘谷要教授。

AIを正しく、賢く、使いこなせる人材を育成する、
「AIライフデザイン学部(仮称)」を2026年度に開設予定


2026年度には、新たに「AIライフデザイン学部(仮称)」を開設予定で、AIを使いこなせる人材の育成に主軸を置いた学部となる予定だ。「AIが登場してから、世の中は急速に変わりつつあります。今後はAIと仕事をする機会が圧倒的に増えるでしょうし、AIを使いこなせるかどうかで仕事の量的・質的レベルに格段に差がつくと考えています」

AIに対しては慎重な見方もあるが、あえて新学部として取り組むのは社会の変化に先手を打つためでもある。「AIにはポジティブな意見と懐疑的な意見ありますが、もはや敬遠している場合ではありません。AIの普及で人がいらなくなる仕事もあるでしょう。一方でAIの進化には未知の部分もあり、高い倫理観を持って、賢く、正しく使うことが重要です。AIはあくまでツール。車と同様にうまく使いこなすことで、活躍できる範囲が広がるはずです」

カリキュラム設計は企業と連携し、社会や職場で即戦力になれるプログラムを取り入れる。日々収集されるビッグデータをどう読み解けば事業に役立てられるのか、解決策を提案できるのか、アプリやAIを上手に使いこなして解析できる力が身につくよう計画中だ。

さらに、「和洋女子大学には、人文、国際、家政、看護とさまざまな専門領域を持つ教授陣がいます。各専門分野でAIの視点を取り入れた授業を展開すれば、AIがあらゆる分野で役に立つことを実感できるはずです。本来の知的・人的資産を生かせるため、最新のAIを使いながら、本学らしさを印象づけられる学部になると考えています」

新学部では文系・理系という概念を取り払い、さまざまな領域を扱う。そのため入学希望者にも理系の発想は求めない。「文理関係なくあらゆる分野の何かひとつの分野に興味があれば充分。そして少しでも人の役に立ちたいと願う人に来て欲しい。目的が明確な人はもちろん、興味はあるけど自信のない人、進路に迷っている人、誰にとってもAIは必ずあなたの味方となって豊かな未来を一緒に歩んでくれることでしょう」

生成AIを活用したアバターによる学校情報案内サービスを導入。
オープンキャンパスでAIに触れてみて欲しい


2024年6月のオープンキャンパスでは、生成AIを活用したアバターによる学校情報案内サービスが登場し、話題となっている。これは「AIライフデザイン学部(仮称)」の開設に先駆け、先進的な取り組みの一環として、生成AIを活用した実証実験をオープンキャンパスにて実現したもの。

高校生や保護者などの来場者が自由に質問できるよう、学内に3台のAIアバターを設置。ChatGPTに象徴される生成AIを活用したアバターは、相手の言葉や質問を理解し、精度の高い自然な会話を実現、まるで人間とビデオ通話をしているような体験ができるという。実際、来場者の多くが、AIアバターとの会話を楽しんでいたようだ。

夏のオープンキャンパスでは、さらに学習量・情報量が増え、対応力がアップしたAIアバターが大学案内を行っていく予定。ぜひ、最先端のAI技術に触れてみて欲しい。

◆2024年オープンキャンパスの日程は下記のとおり
8月4日(日)(※高校1,2年生向け)、8月11日(日・祝)、8月25日(日) ※いずれの開催も9時30分~13時

和洋女子大学 全学教育センター センター長

鬘谷 要 教授

 

和洋女子大学

高い専門性と豊かな教養を兼ね備えた、知性あふれる女性の育成

和洋女子大学は、創設以来、社会で自立できる力を備え、人としての品格を持って行動できる女性を育成しています。時代のニーズに合わせ、学生一人ひとりの総合力を高めるカリキュラムを展開。多彩な教養科目・教養教育で人間力、専門教育でエキスパート力、キャリア教育で生きる力[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

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