「キャリアデザインDAY」――田中総長が語る早稲田大学生のキャリア戦略

 2024年7月1日、早稲田キャンパス国際会議場で「キャリアデザインDAY―未来の自分と社会を描く―」が開催された。第1部で田中総長が早稲田大学生のキャリア戦略について語った後、パネルディスカッションを実施。第2部では社会の最前線で活躍する卒業生30名を招き、グループ座談会を実施した。キャリアデザインDAYは、先述の「大学×卒業生ネットワーク」の一環として実施したもので、「実際に社会で活躍する先輩との交流を通じて、学生一人ひとりに将来について考えてほしい」との狙いがある。ここでは、第1部の様子を簡単に紹介しよう。

 第1部の総長講演では、「早稲田生として望ましいキャリア戦略の立て方」と題して、インターンシップや文理連携教育の取り組みについて田中総長が語った。

 田中総長は欧米のインターンシップが数ヶ月と長期にわたることに言及した上で、「最低でも1週間、できれば2週間の長期に渡るプログラムにし、必ず就業体験を盛り込むこと」が大事であるとした。同時に、大学で4年間学ぶことの重要性について指摘し、特に文理問わず、すべての学生が「論理的に議論を組み立てていく力」を身につけることが大切であるとした。

 「私たち人類が未知の課題と向き合うとき、大学で学んだ学問が役立つ。それは、過去をヒントに根拠となるデータと仮説を示し、新しい問題の解決策を導くことである」と田中総長。大学で学んだ論理的な議論の組み立て方や、解決策を自分の頭で整理し導く力が、社会に出てから実力を発揮するうえで必要となる重要なスキルであることを指し示した。

 その上で、文理の壁を超えた学生を育てる「早稲田大学の文理連携教育」について紹介。アカデミックイングリッシュの向上を目的として設置した「Academic Writing and Discussion in English (AWADE)」や、データサイエンスの基礎を学ぶ「データ科学教育プログラム」などのプログラムを用意していることに触れた。
2024年7月1日に開催された「キャリアデザインDAY」の模様。第1部のシンポジウムで、田中総長が早稲田大学生のキャリア戦略について語った。

社会の最前線で活躍する卒業生から「将来に生きる経験」を学ぶ

 総長講演の後に行われたパネルディスカッションには、田中総長に加えて、ファシリテーターを務めたビジョナル株式会社代表取締役社長の南壮一郎氏、卒業生を代表してアル株式会社代表取締役の古川健介氏と全日本空輸株式会社の石井彩子氏の計4名が参加。「グローバルリーダーとして社会で活躍するために、社会で求められる力」「大学生活で身につけると良い力、将来に生きる経験」など、さまざまなテーマで意見を交わした。

 「グローバルリーダーとして社会で活躍するために、社会で求められる力」に関して、古川氏は「AIの台頭により、この1年で世界はガラリと変わった。AIで正しい答えを出すことが簡単になった今、必要となるのは『問い』を立てる力」と意見した。石井氏はCAとして世界各国を飛び回ってきた経験から、「改めて日本文化の素晴らしさを感じるようになったし、世界が日本に注目していると感じる。そういう意味では、日本の文化や価値観を大切にする心も求められると思う」といった意見が出た。

 「大学生活で身につけると良い力。将来に生きる経験」に関しては、古川氏・石井氏ともに自身の学生時代の経験を踏まえて返答。学生時代に起業した経験をもつ古川氏は、「『ちょっと変わった人』とたくさん会った。彼らの姿を見て社会人に対する偏見が消え、いろいろな生き方があっていいと感じた。学生時代からいろいろな人と会い、対等な立場で社会人と話す力を身につけておくと良いと思う」と話す。石井氏は、「学生時代の経験は一人ひとり異なり、その経験が皆さんの個性を作り上げる。だからこそ、やってみたいという気持ちを大切にして、いろいろなことを経験してほしい」と語った。

 これを受けて、ファシリテーターの南氏は「やりたいことすべてを書き出して眺めてみよう。可視化することはとても大切」とアドバイス。田中総長は「何歳になっても、新しいことに挑戦するのは大事」とした。

 その後の質疑応答では学生が次々と質問を投げかけるなど、パネルディスカッションは終始、活況を呈した。

 早稲田大学が「WASEDA VISION 150 AND BEYOND」で掲げた「2050年までにアジアで最も効果的な教育を受けられる大学だと、世界中の人々から思われる大学になる」というビジョンには、高等教育の最前線に立ち続けてきた早稲田大学の覚悟が見て取れる。早稲田大学が先陣を切って「世界人類に貢献する大学」として名を馳せれば、他の大学も追随し、日本の高等教育全体の底上げにつながることだろう。なかでも「大学×卒業生ネットワーク」の取り組みは、学生と卒業生、そして社会を結ぶハブとなり、同大学のビジョン達成の一助となるに違いない。早稲田大学が「世界に輝く大学」になるのも、そう遠くないはずだ。
国内外で活躍する早稲田大学の卒業生たち。卒業生との交流は、学生が卒業後のキャリアを考える上での大きなヒントになるだろう。

<本件に関するお問い合わせ先>
株式会社ビズリーチ 新卒事業部(ビズリーチ・キャンパス)
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大学ジャーナルオンライン編集部

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