異なる言語を話す先生同士のコラボレーションで、
別の角度から言語学を学ぶ機会も

文系・理系の多岐にわたる分野を専門とする先生たちが数多く所属されている文化情報学部。この学部ならではの授業が、2~3領域の専門の異なる先生方がタッグを組んで一緒に授業を行う「ジョイント・リサーチ」。星准教授のジョイント・リサーチでは、中国語の母語話者である言語学の先生と共に、グループワークが進められる。

「以前は心理学を専門としている先生方と一緒にジョイント・リサーチを行ったことがあります。その時は、「音象徴」についてのリサーチを行いました。例えば、怪獣の名前は濁音が多いということをご存じですか?実は濁音は大きいとか強いといったイメージと結びついている音だと考えられています。また、アメリカ人を対象とした研究によると、男性の名前では「e」や「i」の音が含まれるものが魅力的だと感じられ、「u」のような母音が含まれると評価が低くなる傾向が見られる一方、女性の名前では逆に「u」のような丸みを帯びた母音が好まれる傾向があるという実験結果が報告されています。このように、使用される音によって印象が変わるため、音と商品名のイメージや印象評価がどのように結びついているのかについて、実際に学生達がリサーチしていました。現在、中国語を母語とする言語学の先生と共同で、学生たちが研究テーマの選定から始めて言語分析の手法を学べるジョイント・リサーチを行っています。同じ言語学でも、他の言語と比較したり、異なるアプローチで研究できるところも、ジョイント・リサーチの利点だと思います。」

学問の交差点である「文化情報学部」で
言語学を学ぶことの意義

「最大のメリットは、文系・理系を問わず、さまざまな学問分野に幅広く触れられることです。言語学は多面的な学問であり、さまざまな分野と密接に関連しています。例えば、人類学と結びついた『言語人類学』、心理学と結びついた『心理言語学』、社会学と結びついた『社会言語学』に加え、理系分野では『計算言語学』、『計量言語学』、『神経言語学』、『生物言語学』などがあり、それぞれの分野と連携しながら発展し、独自の学問領域を形成しています。こうした他分野との結びつきにより、隣接する分野にも影響を与えることができるでしょうし、これまで言語学の問題として解明できなかったことが、他分野の助けを借りることで解決に至る可能性も十分にあると思います。文化情報学部は、まさに学問と学問の交差点。この異なる学問が出会う場で、予期しなかった新しい発見が生まれるかもしれません。」

理系の学び×言語学で、
さらに広がる研究の幅

言語学といえば、文系のイメージが強い分野だが、ゼミ生には理系の学生も多いという。
理系の学び×言語学で、多岐にわたる研究が学生時代に行われている。

「私のゼミではとにかく言語に関することであれば、どのような研究テーマでも良いので、自分の興味のあるテーマを探してきてくださいというスタンスです。ただし、必ず過去の先行研究を調べて、一体何が問題なのか、つまり、イシューは何かをきちんと明確にすることができるかどうかが重要です。言語学というと文系のイメージがありますが、実はゼミには理系の学生も多いんですよ。過去には、言語情報がストレス緩和にどれだけ役立つかを明らかにするために生理的データを用いた調査や、人間の脳がどのようにして言語能力を失っていくのかを探るため、失語症やアルツハイマー型認知症患者の言語能力に関する調査を行った学生がいました。また、日本手話における顔の表情の役割に関する研究や、沖縄の離島に特有の方言に関する調査など、言語と学生それぞれの興味を掛け合わせたユニークな調査・研究が行われています。様々な分野の学問が交わる文化情報学部だからこそ、言語学と他分野の知識を掛け合わせ、このような問題についてより深く掘り下げて研究し、学ぶことができると考えています。」

同志社大学 文化情報学部 理論言語学研究室

星 英仁准教授

大学3年の時、アメリカの言語学者ノーム・チョムスキーの著書“Knowledge of Language:Its Nature, Origin and Use”との出会いをきっかけに、人間が言語を生み出すメカニズムに興味を持つ。1995年よりフルブライト奨学生として、アメリカ・カリフォルニア大学アーバイン校に在籍し、博士号を取得。その後、客員研究員として2年間、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学にて在外研究を経験した。専門は理論言語学で、中でも「統辞論(Syntax)」という言語表現を生成する法則について研究している。

 

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同志社大学

「一国の良心」を受け継ぐ。志を一つにして次代へ向けて邁進

1875年、新島襄によって同志社大学の前身である同志社英学校が創立。「キリスト教主義」「自由主義」「国際主義」を教育理念とする良心教育を実践してきました。真理を愛し人情を篤くする徳、個性を尊重し一人一人を大切にする精神、広い視野をもって世界を捉える力、これらを[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

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