2024年10月9日、文部科学省は「令和7年度(2025年度)国公立大学入学者選抜の概要」を発表しており、国公立大学の総合型選抜の募集人員は1,378名増の9,298名(17.4%増)、学校推薦型選抜の募集人員は724名増の22,475名(3.3%増)と、特に総合型選抜の募集人員が伸びているのが目立ちます。これとあわせて導入が増えているのが、理工系学部の「女子枠」の導入です。
 国公立大学2024年度入試では、15大学が採用し、2025年度入試では30大学と倍増しました。2024年10月14日時点では、2025年度入試の一部大学の総合型選抜はすでに出願が締め切られていますが、東京科学大学や金沢大学の総合型選抜や、各大学の学校推薦型選抜の出願開始は、10月末前後からとなっており、これからです。このコラムでは、女子枠を採用している国公立大学を学部単位でまとめるとともに、「女子枠」を新規導入した大学・学部で、女子比率が上がったのかどうかを検証してみたいと思います。

 

2025年度入試「女子枠」導入の国公立大学は30大学37学部で、募集人員は578名と約2.4倍に。最大の募集人員は、東京科学大学の149名。

 国公立大学の「女子枠」は、名古屋工業大学が1994年度入試で初めて採用し、兵庫県立大学が2016年度入試で導入。その後は、2023年度から急激に導入する大学が増えており、2024年度では15大学18学部、2025年度では30大学37学部が導入しています。2025年度入試で最も募集人員が多いのは、2024年10月1日に東京工業大学と東京医科歯科大学が統合した「東京科学大学」の149名。東京科学大学を学部単位で見た時に、特に募集定員が大きいのは、2025年度から新規導入となる「工学院」の70名。入学定員が348名となっているため、約2割が女子枠となります。

※一覧表は、学部単位になっていますが、「女子枠」の導入は、学科やコースを募集単位としている大学も多く、その中心は、機械・電気電子・情報系となっています。したがって、大学によっては全学科コースには導入されていないケースもあります。詳細は、各大学の募集要項をご覧ください。
※2024年10月18日修正しました。2025年度 女子枠募集定員 東京科学大学 情報理工学院 14名→20名。東京科学大学 女子枠全体で143名→149名。
※2024年11月11日修正しました。2025年度 女子枠募集定員 秋田大学 総合環境理工学部19名→15名。

2023年度、2024年度入試「女子枠」導入により、女子比率が上がった大学と、そうでない大学とで差がある。数年の結果を見ないと、効果は見えづらい

 女子枠の検証する場合、女子枠入試の倍率や入学者も大切ですが、本来一般選抜を受験しようとしていた層が、総合型や学校推薦型「女子枠」を受験してしまっている可能性もあるため、ここでは、最終的な女子入学者比率をみています。

 2023年度入試で導入した富山大学(工学部)、2024年度入試で導入した北見工業大学(工学部)、東京科学大学(情報理工学院、物質理工学院、生命理工学院)、金沢大学(理工学域)、大分大学(理工学部)、2024年度入試で募集対象学科を増やした名古屋工業大学(工学部)については、最終的な入学者の女子比率が上がっており、今までにない女子層が受験してくれたのではないかと考えられます。それ以外のところは、女子枠の募集人員が極端に少なかったり、新設により前年との比較ができなかったりなどがあり、検証が難しくなっています。また、告知したタイミングがかなり遅かった大学も多いため、女子高校生に知れ渡っていなかったということも考えられ、数年間は経過を見る必要がありそうです。

2025年度入試「女子枠」の注目は、千葉大学情報・データサイエンス学部、東京科学大学工学院、名古屋大学工学部、神戸大学システム情報学部

 2023年4月国公立大学の学部入学者で、最も女子比率が低かったのは、東京工業大学(現:東京科学大学)情報理工学院で、2023年度入学者の女子比率は4.1%となっています。一般的に、情報系は、女子比率が低く10%程度になりやすい学部学科系統になっています。2024年4月に新設された、千葉大学情報・データサイエンス学部の2024年4月入学者の女子比率は8.7%となっています。これらの結果から考えれば、2025年4月に新設される神戸大学システム情報学部も、何もしなければ、同じように女子比率10%程度になるのではないかと予測されます。

 千葉大学情報・データサイエンス学部や神戸大学システム情報学部は、女子に注目されづらい系統の中で、偏差値も高く新しい学部になりますので、注目度も高くなっています。

 また、女子枠の募集定員の多さという点で、東京科学大学工学院も注目です。工学院だけで入学定員の約2割にあたる70名という募集定員です。どのくらいの応募があるのかが注目されます。名古屋大学工学部は、2023年度入試で女子枠を導入していますが、2025年度から、エネルギー理工学科に加えて、化学生命工学科と機械・航空宇宙工学科でも新規導入します。特に機械・航空宇宙工学の分野も、情報系と同様で女子比率10%前後になっている学部学科系統のため、どのくらい受験者が集まるか注目されます。

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。