理系・文系のさまざまな科目を、偏りなく横断的に学ぶ文理融合型の学びで、「総合知」の創出をめざしている、同志社大学の“文化情報学部”。
今回は、その中で「現代文化概論」「映像情報解析論」の授業を担当されている映像文化論研究室の佐野 明子准教授に、詳しくお話を伺った。
スマホやテレビで目にする「映像」をデータ化し、
社会背景をふまえて分析することで見えるもの
「私自身が専門とする『映像文化論』は大きく分けて2つ。文化情報学的な映像文化論と、人文学としての映像文化に関する研究です。いずれにせよ『映像文化論』とは、私たちの身の回りにある映像文化が、どのような形式や特徴をもち、他のメディアとどのような関係を結び、政治的・経済的・社会的な状況とどのように関わって生成されるのかを探究する学問です。研究対象は非常に幅広く、映画やアニメーションのような動画にはじまり、絵本、絵画、マンガなどの静止画、玩具やグッズ、それらを享受したり発信したりする私たち観客・読者、産業構造なども含みます。」と語る佐野准教授。
今大事だと思われている研究と、100年後を見据えて将来的に大事になる可能性が高い研究の2つに仮に分類すると、『文化情報学』はどちらかというと後者の未来志向的な学問。文化を情報学や統計学的なアプローチで研究する同志社大学のようなスタイルは、まだ日本では多くないため、授業で使う参考文献のほとんどが英語文献なのだそう。「映像文化論」を専門に研究する佐野准教授が担当する、「現代文化概論」、「映像情報解析論」の授業について、さらに詳細を伺った。
「現代文化概論」では文系的、
「映像情報解析論」では理系的な方法論をバランスよく学ぶ
「『現代文化概論』では、前半ではアニメーション一般、後半では戦争とアニメーションを題材にします。前半のアニメーション一般では、最初はまず“世界の中の日本”を意識していただくために、国内外の多様な作品を取り上げて、美学的・美術史的な観点から“動く映像”に関する理論的な視座を学生たちに獲得してもらいます。その上で、後半では1930年代~40年代のアジア・太平洋戦争期の日本アニメーションに焦点を当て、戦前・戦後を分断することなく第一次世界大戦から現在に至るまでの連続性に目を向ける『貫戦史』という歴史学の視点も取り入れながら、映像にあらわれる表象や、その作品における技術やスタッフの役割にも目配りし、現在の日本アニメーションについて複眼的に分析できるリテラシーを身につけていきます。
また、『映像情報解析論』では、“計量映画学”という、映像やアニメーションの数値データを統計的に分析する方法論を学びます。映像には、まるで現実のような世界を構築して物語を効果的に観客に伝えるために多彩な技法が駆使されています。例えば、登場人物の目線で撮影した映像を見せることで、登場人物へ感情移入しやすくなる “視点ショット”。登場人物の顔を大きく写して視覚的に強調する“クロースアップ”。このような技法が、対象となる作品の中にいくつ入っているか数値をカウントし、Rという統計解析ソフトを使用して分析します。
学ぶ上で大切なことは、文系も理系もどちらも重要な方法論であると認識するフラットな態度です。美学、映画学、社会学等の文系の手法から明らかにできること、および、データサイエンスの理系の手法から明らかにできることをまずは把握しましょう。その上で、自分の問題意識やテーマを明らかにするために、どの方法論を用いると良いか、どう組み合わせると良いか、適切に選択しようとする姿勢が大切になるでしょう。」
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