「挑戦をもっと自由に」を学園ビジョンR2030に掲げる立命館大学。2024年には大学と社会をつなぐ共創プラットフォーム「TRYFIELD」を大阪いばらきキャンパスにオープン。2026年には新たな展開として「デザイン・アート学部」をスタートさせる。目指すのはデザインの力で社会の閉塞感を打破していくCX(クリエイティブ・トランスフォーメーション)人材の育成だ。現代社会やデザイン・アートを取り巻く課題に一石を投じ、新たなデザイン学の再構築をも目指す同学部の構想について聞いた。
狭義のデザインにとどまらず、美的感性を軸とした
創造的思考や共創力を社会に波及させるCX人材を育成
「デザイン・アート学部のコンセプトをひと言で言うと、「美的感性」を育てるということ。デザインやアートといった営みに深く関わることでしか得られない美的感性を磨き、ここを巣立った卒業生が、その美的感性に根ざした価値判断やマインドセットを社会へ少しずつ波及させていく。そうした拠点となることを目指しています」。そう思いを語るのは、デザイン・アート学部/デザイン・アート学研究科設置委員会事務局長の八重樫文教授だ。
現代では、あらゆる分野でデザイン思考が普及する一方、デザインの価値として問題解決や機能性といった側面ばかりがクローズアップされがちだ。また、データや数値への偏重がアイデアの均一化や、社会の閉塞感をも招いている。こうした状況を打破するため、既存にはない新たな思考やプロセスが世界的に必要とされている。
「求められているのは、多様な場におけるクリエイティビティです。プロダクトの形や機能を担う狭い意味のデザインではなく、たとえば、社会のビジョンを構想したり、新たな文化を創り出すなど、前向きに社会を変えていく力として、また自ら考え創りだしていく能力としてのデザイン力が必要です」
そこで、同学部が掲げるのがCX人材の育成だ。CXとは同学部独自の概念で、DXがデジタルで世の中を変革していくように、クリエイティブで社会に変化を促すという意味を持つ。美的感性を基盤におきながら、さまざまな学問領域(4つの領野)を学ぶことで、社会のあらゆる分野でCXを推進する人材の育成を目指していく。