2025年3月、神奈川大学の新たな入試制度が発表された。年内入試では2種類の総合型選抜を、年明けの一般入試では〈全学統一型〉を新設する。受験生の負担を減らすための制度も、さらに充実させた。入試改革のねらいやポイントを、神奈川大学入試センター所長であり、国際日本学部日本文化学科の駒走昭二教授に伺った。
高校での努力を評価する、2種類の総合型選抜
2028年に創立100周年を迎える神奈川大学。横浜エリアにある2つのキャンパスに文理11学部を擁している。2021年に誕生した「みなとみらいキャンパス」には、グローバル人材を育成する3学部が集結。2023年には理工系学部の再編を実施し、さらに横浜キャンパスに化学生命学部と情報学部を新設した。2026年4月には、経済学部に「経済データ分析学科」が新設される予定だ。
駒走所長は、次のように語る。
「本学はここ数年で教育内容やキャンパスを充実させ、大学の魅力向上に取り組んできました。今年度は、入試制度の改革にも着手します」
神奈川大学ではどのような資質や能力を持つ学生に来てほしいかを考え、学部・学科ごとに出願資格を細かく設けてきた。しかし内容が複雑化し、準備にも長い時間がかかるため、「受験生の負担になっているのでは」と懸念されるようになったという。
「より多くの方に本学を受験してもらうため、チャレンジしやすい入試制度へと大きく舵を切ることにしました」
まずは受験生のニーズも考慮し、年内入試に大胆な変更を加えた。「公募制推薦入試」を一部残した一方で、「AO入試」は廃止。代わりに2種類の「総合型選抜」を新設した。どちらの総合型選抜でも、学校長の推薦書は不要だ。
10月に実施される「総合型選抜〈総合評価型〉」の出願資格は、高校の評定平均値のみ。出願書類の審査と面接、さらに筆記試験(文系は小論文、理系は数学か理科※1)で合否を判断する。
※1 一部学科を除く。
11月実施の「総合型選抜〈適性検査型〉」には出願条件がなく、神奈川大学で積極的に学ぶ意志を持つ人であればチャレンジできる。選考では出願書類の審査と高校の評定平均値に加え、適性検査を課す。適性検査の内容は科目に関する基本的な問題で、国語と英語、または数学と英語の組み合わせで受験する。学力試験ではあるが、年明けの一般入試よりも科目数が少ないため対策をしやすい。また、複数学科の併願も可能で、2併願目の受験料が0円になるなど受験生の負担を減らす工夫がされた。
昨今は年内入試でも学力試験を課す大学が増加している。しかし神奈川大学の「総合型選抜〈適性検査型〉」では、適性検査の結果に加えて評定平均値を重視しているのも特徴だ。
「本学では評定平均値を、学習習慣による成果と捉えて高く評価します。高校時代に学習習慣が身に付いている学生は、大学でも勉学に励む傾向があるからです。高校の偏差値に関係なく、大学入学後の成績が伸びるケースが多く見られます」
高校での努力が評価され、しかも年内に合格が得られる。受験生の負担を減らしつつ、学習へのモチベーションも高める受験になりそうだ。
経済的負担を大幅に軽減。伝統の給費生試験も進化
前述した「総合型選抜〈適性検査型〉」に限らず、年明けの「一般入試〈全学統一型〉」「大学入学共通テスト利用入試」でも、同一日程併願で2併願目の受験料が0円になる『2併願目無料制度』が適用される。
「複数の学科を受けようか迷う受験生も多いと思います。2併願目を0円にすることで、入学のチャンスを広げたいと考えました」
さらに、1933年から続く神奈川大学伝統の「給費生試験」もパワーアップする。従来は合格者に4年間で最大880万円を給付していたが、2025年度から最大920万円に増額。まずは、初年度に入学金相当額として20万円が給付される。加えて、法・経済学部には年額105万円、経営・外国語・国際日本・人間科学部には年額115万円、理・工・建築・化学生命・情報学部には年額155万円と、学部ごとの学費に応じた金額も給付する。さらに自宅外通学者※2には、年間70万円の生活援助金を給付。給費生としての継続審査は毎年あるものの、奨学金の返還義務はなく、卒業後の進路も拘束されない。
※2 自宅からの通学が片道2時間以上かつ、下宿等から通学する者。
会場や科目の選択肢が増加!年明け入試も受験チャンス拡大
年明けの入試制度もさらに充実。なかでも注目したいのが、一般入試に新設される〈全学統一型〉だ。全国22箇所に試験会場を設け、同一試験日に複数学科を併願できる。
「本学には地方から進学してくれる学生も多いです。自宅から近い会場で、しかも1日に複数学科を受験できれば大きな魅力になると期待しています」
ほかにも総合力で勝負できる「3科目型」、得意分野を活かして2科目で受験できる「得意科目型」、大学入学共通テストと本学試験(1科目または2科目)を組み合わせて受験できる「共通テスト併用型」などを用意。入試方式が多彩になったため、受験生は自身の強みにあったものを選べる。
英語外部試験も導入!英語が得意な受験生の後押しに
「総合型選抜〈適性検査型〉」「給費生試験」「一般入試(前期・後期)」では英語外部試験が使えるようになった。実用英語技能検定(英検®)やGTEC(CBT)、TEAP、IELTS(アカデミック)などの外部試験で取得したスコアが、大学受験にも利用できるのだ。もちろん大学独自の「英語」試験も受験可能。その場合は、得点の高い方が採用される。
一連の入試改革は、受験生や保護者、高校の進路指導の先生方からも好評だそうだ。
「より受けやすく、わかりやすくなった」神奈川大学の入試制度。受験者層が拡大することでさらに多様な学生が集うキャンパスになるのではと、期待が高まる。
神奈川大学 入試センター所長/国際日本学部 日本文化学科
駒走 昭二教授