京都橘大学では2026年4月、文系・理系の壁を超えて「世界を変える」教育研究をめざし工学部ロボティクス学科をはじめ、デジタルメディア学部、健康科学部臨床工学科を新設する(いずれも仮称・設置申請中)。今回は、知能情報学や知能ロボティクスに関係するAI研究の第一人者でもあり、新たにロボティクス学科に着任予定の工学部長・松原仁教授にAIロボティクスの可能性、その魅力、また多彩な学びで進化する京都橘大学についてお話を伺った。

ロボットと共生する未来
今注目のAIロボティクス
ファミリーレストランに入れば、ロボットがフロアを動きまわり、料理を運んでいる風景は、今やよく見られる日常となった。
「ロボットが、人間と共生していくためには、周囲の環境を認識して危険な衝突などを避けて動く能力が必要ですが、生成AIの登場によって「環境を察知する感覚」「状況を判断する思考」「目的を達するための行動」というロボットに必要とされる3要素が進化し、ロボティクスの可能性は飛躍的に広がりました」
生成AIに続く次のブレークスルー・テクノロジーとして注目されるのが、AIとロボット技術を融合させた「AIロボティクス」。
これまでロボット開発といえば、機械系に興味のある理系出身者を中心に発展してきたが、未来のコミュニケーションロボットの開発には、ロボットを作るための基礎知識や技術はもちろんだが、今までにない視点やアイデアが必要となってくる。それには文理も男女も関係ないと松原教授は指摘する。
「もし、スマホのように1人1台のロボットが当たり前になったとき、そのロボットにあなたは何をさせたいですか?どんなロボットがあれば、人間は幸せになれるのでしょうか。ロボティクス学科は、そんな未来のロボットを考えたいという学生を歓迎します」
ロボットの研究は
人間を理解するということ
「たとえば、誰かと誰かが話をしているとします。その人たちの間には社会空間(Social Space)ができているので、人間は、その社会空間を認識するから2人の間を通りません。でも社会空間を認識できないロボットは真ん中を通ってしまい、人間は「なんだ、このロボットは」と不快に感じてしまいます。そこで、社会空間を認識し、そこに立ち入ることを回避するシステムを作ると、人はこのロボットに好感をもつということがわかりました。人間がやっていることをロボットにやらせようとすると、人間が無意識にやっていることや、その難しさに気づき驚かされることがたくさんあります。
AIに身体性をもたせ体験や学習を続けさせていけば、人間のような心をもつロボットが誕生するのではないか、そういった研究も世界中で進んでいます。
ロボットは人間の映し鏡のようなもので、ロボティクスを学ぶことは、人間を理解するための学びだともいえます。
これからは人間と共生できるコミュニケーションロボットが一層広がり、職場や家庭に当たり前に存在するようになるでしょう。家庭に一台『パートナーロボット』が普及し、話し相手や家事の手伝いをしてくれる。そんなロボットがいる社会が私の夢です」
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