分野横断的にデータを活用できるプロに。
有名企業との協業で実在のデータを使って学べるのが強み
日本初のデータサイエンス学部として誕生し9年。加速度的に変化する業界動向に呼応し、常に最新の学びや研究体制を取り入れ進化してきた。例えばChatGPTが世界を席巻した年の秋には生成AIの講義を開始、国内大学で初めてChatGPTEduを導入した。
統計学を専門とする佐藤健一教授は、「データサイエンスを掲げる大学であっても、教員が各学部に分散しその専門領域のデータに特化したデータ活用を学ぶというアプローチが一般的です。本学はデータサイエンス学部として一つにまとまっているのが特徴であり、分野横断的なデータ活用のプロをめざせます。その規模は西日本最大です」と大きく胸を張る。
企業や自治体との連携も強めている。2016年に発足した日本初の教育研究組織は、2022年から「データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター」へと発展し、実社会の課題解決に取り組む。「企業との連携はセンターが中心に進め、実務にはセンターの教員と学部の教員が各1名携わります。本学の教員はすべて、実社会の動向や企業でデータを扱う上での課題を肌身で知っており、それが学部教育にも反映されています。企業から教育のためにとデータを提供いただくこともあり、学生が実データで学べるのも本学の特色です」
「教員も毎年増強しています。2025年度は学部35名、センター21名の合計56名の教員がデータサイエンスを担当することになりました。情報学と統計学はもちろん、医療や創薬、気象、ゲームなど多彩な専門分野を持つ教員が在籍していますので、3年次以降の所属コースやゼミを選ぶ際に、自分の興味に沿ったテーマを見つけることができるでしょう」
市川ゼミに所属する学生が株式会社滋賀レイクスターズのデータを解析し、その結果を報告する様子。
数学以上に大切なのはコミュニケーション。
定員増、女子枠の設定など、多彩な学生が求められている
データサイエンスにはどんな人が向いているのか、興味があると言う高校生のなかには、数学が苦手と言う人もいるかもしれない。そんな疑問に佐藤教授が答えてくれた。
「データサイエンスは実学です。相談者が抱える問題や解決したい課題を聞き取り、それを自分たちが持つ手法に落とし込み、データを解析した結果を伝えるところまでが私たちの仕事。そのため、データサイエンティストはコミュニケーションが何より大切」と強調する。
「また、数学は正解が一つ、かつ問題文に必要な情報が揃っていますが、データサイエンスには絶対的な正解がなく、限られた情報をもとに仮説を立て、そこからわかったことを伝えます。その意味では全く異なる学問です。もちろん数学はできたほうが良いですが、それだけでは足りないので、学部で必要なことをしっかり学んで欲しいと思っています」
就職先も、データサイエンスへの期待を表すように、情報通信、メーカー、コンサルティング、保険など多彩な可能性が広がっている。昨今では、企業も自治体もDXや生成AIの導入に力を入れており、滋賀大学にも様々な相談が寄せられる。しかし、長年かけて蓄積したデータのほとんどが将来的な利活用を前提としていないため、データ量は膨大でも何をどう処理すればよいかわからず困っているケースが少なくない。データサイエンティストの活躍の場はますます広がっていきそうだ。
滋賀大学データサイエンス学部では、2025年度入学定員を100名から150名へと増員。さらに多彩な学生を募集するために総合型選抜に20名の女子枠も設定した。始動したばかりのデータサイエンス新章の先陣を切り、新たな時代を切り拓いていって欲しい。
滋賀大学
左)データサイエンス学部 佐藤健一教授
右)データサイエンス学部長 市川治教授
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