千葉大学大学院の倉阪秀史教授らは、人口減少・高齢社会のインパクトを地域レベルで実感できるよう、全市町村に対応した「未来カルテ」発行プログラムを無料ダウンロードできるようにした。「未来カルテ」には各種統計データなどを用いて現在の人口減少・高齢化傾向が継続した場合の2040年の各地域の状況を予測した結果が掲載される。JST社会技術研究開発センターが推進する戦略的創造研究推進事業の「多世代参加型ストックマネジメント手法の普及を通じた地方自治体での持続可能性の確保」によるもの。
社会をささえる各種資本基盤(人、人工物、自然、人と人とのつながり)が健全な状態に保たれていることが、社会の持続可能性の前提であるが、人口減少・高齢社会においては持続可能性を支える各部門の人材不足が深刻化する見込みである。
この「未来カルテ」は人口減少・高齢化のインパクトを基礎自治体レベルで実感するための手段であり、現在の傾向が継続した場合の2040年の産業構造や、保育、教育、医療、介護の状況、公共施設・道路、農地などの維持管理可能性など約10分野について、国勢調査や国立社会保障・人口問題研究所の人口予測などの各種統計データを用いて、5年ごとの推移をシミュレーションした結果が掲載される。
「未来カルテ」では、単に人口予測や産業構造、介護、医療などの現状を図示するだけでなく、人口予測データに紐づける形で、現在の傾向が継続すれば将来どのようなことが起こるのかも示す。これまでは希望する自治体に個別に「未来カルテ」を提供してきたが、2017年10月30日からホームページで「未来カルテ」発行プログラムを無料でダウンロードができるようになった。指示に従って市町村コードを入力すれば、誰でも指定した市町村の「未来カルテ」を入手できる。
この「未来カルテ」の情報は、自治体の政策・総合計画の検討に活用されるだけでなく、中学生・高校生が2040年の未来市長として政策提言を行う「未来ワークショップ」など、将来の課題に気づくための各種研修プログラムで活用されることを想定している。すでに、千葉県市原市、八千代市、静岡県などで未来ワークショップが行われている。