筑波大学医学医療系・生命領域学際研究センター渋谷彰教授、小田ちぐさ助教らは、腸管、皮膚、気管などの粘膜の死細胞が免疫細胞を刺激して炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、喘息の発症を促進することを発見しました。これらの疾患の新治療開発が期待されています。
腸管、皮膚、気管などの粘膜は上皮細胞によって保護され、上皮細胞は死と新生を絶えず繰り返して粘膜を維持しています。死細胞は垢や便、痰などとして排泄され、特に何の役割もないとされてきました。研究グループは、2003年に免疫細胞からCD300aというタンパク分子を発見、2012年には死細胞から表出されるフォスファチジルセリンというリン脂質とCD300aが結合すると、免疫細胞の活性化を抑制することを確認しています。今回、CD300aを発現するのは樹状細胞とランゲルハンス細胞という免疫細胞であり、この免疫細胞が死んだ上皮細胞と接着していることを突き止めました。さらに、CD300aが死細胞のフォスファチジルセリンと結合すると粘膜細胞組織において制御性T細胞の数を制御することがわかりました。免疫細胞が活性化すると腸炎、アトピー性皮膚炎、喘息を増悪しますが、制御性T細胞には免疫細胞の活性化を抑制する機能があります。本研究は、粘膜上皮の死細胞がCD300aを介して腸、皮膚、気管などの粘膜組織の制御性T細胞の数を減少させ、疾患の促進に関与することを解明しました。
原因不明の難病である炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)やアレルギー疾患(喘息、アトピー性皮膚炎など)の患者数は年々増加しています。本研究が明らかにした粘膜の死細胞の役割を踏まえ、CD300aの働きを抑制する新薬開発により革新的治療をもたらす可能性があるとしています。