福岡市内の動物病院を受診した輸入飼育ヘビが「ヘビ真菌症」を発症していることが確認された。本菌の確認は本邦初であるどころか、アジアにおいても初めてで、今後の流行が懸念される。
ヘビ真菌症は1986年に北米の飼育下のヘビで初めて報告された、カビの一種Ophidiomyces ophiodiicola(O. ophiodiicola)を原因菌とする真菌症である。重篤な皮膚感染症で、2008年以降は飼育下だけでなく野生のヘビでも感染が確認されるようになり、2015年にはアメリカ東部のほぼすべての野生種のヘビで報告がある。
北米以外でも、イギリス、ドイツ、オーストラリアの飼育下のヘビからも検出されるなど、世界の30種類以上のヘビに伝播が確認されている新興感染症だが、今日まで、アジアにおける感染報告はなかったという。
今回報告された国内における症例は、2019年4月から2019年10月にかけて福岡市内の動物病院が診察した1匹の輸入飼育ヘビである。水疱、膿疱、痂皮などの皮膚病変がみられ、一緒に飼育されていたヘビ11匹にも次々と同じ症状が出現した。最終的に、12匹のうち5匹が死亡し、7匹は抗真菌薬などの投与によって生き残ったが、国立科学博物館および岡山理科大学にて死亡ヘビのサンプルを用いて病原菌の形態観察、遺伝子解析および病理学的検査を行った結果、O. ophiodiicolaによるヘビ真菌症であったことが確認された。
12匹のヘビはいずれも飼育下かつ外国産のヘビだったものの、日本には51種の日本固有の野生ヘビも生息している。欧米各地で様々なヘビの種の保全を脅かす本病原菌が日本の野生ヘビに拡散しないよう、今後の影響評価や潜在的な国内分布に注意する必要がある。