名古屋工業大学、東北大学サイバーサイエンスセンター、東京電機大学の共同研究グループは、気象データと計算シミュレーション技術を融合し、東京都・大阪府・愛知県・宮城県の一日当たりの熱中症搬送者数を予測。実測値と比較し、コロナ禍による2020年の熱中症搬送者数への影響を考察した。
熱中症発症の患者数・搬送者数は気象の影響、人の暑さ慣れなどが複合的に関係し、過去のデータとの単純比較ではコロナ禍の影響か気象の影響かが不明瞭になる。今回、気象情報に基づく熱中症搬送者数予測術を用いて気象の影響を取り除いて比較し、人口動態も考慮した予測値も同様に示した。
大阪府・愛知県・宮城県では、ステイホームの影響で屋内にとどまる人の割合は多かったが、屋内からの熱中症搬送者は例年と同傾向だった。屋内搬送者の約7割が高齢者でステイホームの影響を受けなかったとみる。また、屋外からの搬送者は、お盆時期にはステイホームにより搬送者数は減少。他の時期では屋内・屋外搬送者数ともに変化なし。コロナ禍による人口動態が変化しても、ステイホームに伴う暑熱順化の遅れや体力低下により、同じ作業でも多くのエネルギーを消費し、体温上昇しやすくなったことで影響が見られなかったと示唆される。
一方、東京都では屋内・屋外ともに例年より増加傾向。特にお盆期間中の屋内搬送者数が予測値を大きく上回った。推定式では急激な気温の変化を十分考慮できないことに加え、コロナ禍による帰省の自粛や、ステイホームによる体力低下などの複合的影響が考えられる。
今後、熱中症リスクの低減に向けた啓発活動への利用や、救急搬送される患者数の推定などへの応用が期待されるとしている。