大学入試のあり方を検討してきた文部科学省の有識者会議は、大学入学共通テストでの記述式問題導入、英語民間試験の活用について実施を断念し、各大学の個別入試で対応するよう求める提言を萩生田光一文部科学相に提出した。文科省は近く正式に断念の方向を打ち出す見込み。

 文科省によると、提言は国語と数学の記述式問題について、質の高い採点者の確保など課題が残り、大学入学共通テストでの実施が困難と指摘、個別入試でより高度な出題をする方が望ましいとした。

 英語民間試験の活用に対しては、新型コロナウイルスの感染拡大で民間試験の中止が相次いでいることなどを挙げ、外部試験に過度に依存する仕組みの問題点が明らかになったとした。さらに、これまで指摘されてきた受験生の地理的格差是正が解決していないことも指摘し、実現が困難との判断を示している。

 文科省は記述式問題導入と英語民間試験の活用を大学入試改革の柱と位置づけ、1月の大学入学共通テストから実施する予定だったが、受験生らの反発を受けて2019年11~12月に見送りを決めた。

 2025年1月の大学入学共通テスト以降の対応について、有識者会議で検討を進めていたが、課題解決の見通しが立たないという点で意見が一致した。受験生や高校、大学を振り回しただけの結果に終わった格好で、提言には「文科省が受験生に与えた影響を真摯に受け止めることを求める」との文言が加えられている。

参考:【文部科学省】大学入試のあり方に関する検討会議提言

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。