最近10年間に梅雨前線の降水活動が非常に活発となっていることがわかった。東京都立大学および名古屋大学のチームが、降雨観測衛星の長期間観測データを用いて明らかにした。

 中国付近のメイユ前線と日本付近の梅雨前線では、西風と東風が合流して多量の水蒸気が輸送されることに伴って、多量の降水がもたらされ、しばしば気象災害が引き起こされる。九州地方に甚大な被害をもたらした令和2年7月豪雨もその一つだ。

 本研究では、最近の豪雨災害の頻発を理解するために、人工衛星に搭載された降雨レーダのデータを用いて、梅雨前線帯の雨の降り方の長期変化を調べた。宇宙から降水を直接観測したユニークなデータを活用することにより、長期間に渡って均質な実測データによる解析が可能となった。

 解析の結果、2010年代の梅雨前線帯における降水活動は、その前の2000年代よりも明らかに活発化していることが確認された。例えば、2010年代の10mm/hr以上の非常に強い降雨の頻度は、2000年代よりも約25%も高くなっていた。

 さらに、最近約20年間の梅雨期の大気の流れも解析した結果、2010年代では、2000年代に比べて、太平洋高気圧の東縁に沿った南からの水蒸気輸送が強化されていること、亜熱帯ジェット気流上に大気の波動が存在し、梅雨前線付近で上昇流を強化するような気圧の谷が強まっていることという2つの傾向が顕著に認められた。これらの大気の流れの変化が、梅雨前線活動の活発化にも関連しているとみられる。

 本研究により、梅雨前線の雨の降り方が平均的に強まっていることが示唆され、今後はそのレベルの降水活動に対応した防災対策が必要となると考えられる。将来においても、降雨観測衛星による継続的なモニタリングが重要である。

論文情報:【Scientific Reports】Recent decadal enhancement of Meiyu-Baiu heavy rainfall over East Asia

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