長引く林業の不振から日本人の山離れが深刻さを増しているが、神戸大学や総合地球環境学研究所、滋賀県立大学、京都大学、早稲田大学などの研究グループは、山離れ防止の手掛かりとなる「森林に関する主観的幸福度」(以下、森林幸福度)を測定し、動植物の観察や個人所有の森林管理が幸福度を高めることを突き止めた。
神戸大学などによると、研究グループは滋賀県の野洲川上流域住民1,457人から回答を得たアンケート調査を解析し、森林活動が森林幸福度と強い関係を持つことを発見した。
動植物の観察は森林幸福度にプラスとなる感情を高め、マイナスになる感情を低くする傾向があった。
一方、個人所有の森林管理やボランティアで参加する森林管理は、山や森林との関わりに対する満足度や、やりがい、充実感、達成感を高めるが、地元の山の管理はプラスとなる感情を低くしていた。地元の山は地域の共有で、管理作業に義務感を感じているためとみられる。森林所有も負の感情を強くする傾向が見られた。森林の資産価値が年々低下する中、森林管理の負担感が大きくなっていることに関係がありそうだ。
研究グループは森林幸福度を高める施策を打ち出すことで、地域住民と森林の関係を深められ、住民の山離れに歯止めをかけるヒントになるのではないかとみている。これを実現するために、滋賀県が展開中の森林との関係を深めるプロジェクトに森林幸福度の考え方を応用するよう提案している。