国立大学協会は「安全保障貿易管理に関する国立大学協会としての考え方」をまとめ、経済産業省に提出した。経済産業省では現在、近年の国際環境を踏まえた安全保障貿易管理政策を検討している。安全保障貿易管理とは、重要な先端技術情報が流出して懸念国やテロリストなどに渡らないように、外国為替と外国貿易法(外為法)に基づいて行う技術提供管理のこと。

 現在、国立大学は国際化推進を基本方針としており、政府もその方向性を国内外に明確に示し、阻害が生じないように求めている。留学生の受入れなどによる多様な国々との関係強化は広義の安全保障としている。懸念される特定の国・地域からの留学生受け入れは、適切な管理が行われれば問題ないとし、過度な規制はむしろマイナスの影響や不当な差別の恐れがあるという。また、主要先進国の規制・運用との整合性も配慮すべきとしている。

 このほか、規制基準を明確化し、運営面で大学に過度の責任や負担を課さないよう求めている。現状では、提供する技術と相手に不明確さがあり、留学生受け入れの入口管理の責任の所在が大学側に偏していると指摘。政府と大学が協力して、役割と責任を分担する仕組みが必要としている。また、特に特許法における「公知」(一般に広く知られること)概念の適用範囲があいまいであり、基準設定では大学での「研究成果の公開を前提とした研究活動」は明確に規制対象から除外するよう定義と解釈の見直しを要望している。最後に、大学における安全保障貿易管理には、人材や財政面で限界があるため、政府・関係機関によるサポート体制の充実、運用に関する継続的な検討・協議の場の設置を求めている。

大学ジャーナルオンライン編集部

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