東邦大学薬学部微生物学教室の安齊洋次郎教授らの研究グループは、希少放線菌Actinocatenispora属の新種を発見したと発表した。
放線菌は、土壌や植物など自然界に広く分布する多様な物質の生産菌であり、その中には現在の医療に欠かすことのできない抗生物質などの医薬品も含まれている。安齊教授らは、学術交流協定を結ぶモンゴル国立大学のJavzan Batkhuu教授らの研究グループと共に放線菌を用いた有用物質の探索研究をすすめており、今回、モンゴルに自生し、グラム陽性細菌に対する抗菌活性を有することで知られる薬用植物Comarum salesowianumに内生する放線菌の分離実験を行ったという。
Comarum salesowianumから分離された菌株NUM-2625は、遺伝子解析の結果、希少放線菌Actinocatenispora属の菌種であることが強く示唆された。そこで、製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターの田村朋彦博士らと共にNUM-2625とActinocatenispora属の既存菌種のゲノム配列などの比較を行った結果、NUM-2625はActinocatenispora属の既存の菌種とは異なる新種であることが明らかになった。Actinocatenispora属の既存菌種は3例あるが、いずれも土壌から分離されたものだといい、NUM-2625はActinocatenispora属としては初めて植物から分離された放線菌となった。
Actinocatenispora comari NUM-2625Tと命名された本菌種からは、有用物質の生産は確認されていないものの、抗菌薬、抗悪性腫瘍薬、免疫抑制薬などの医薬品の生産菌である放線菌の新種は、新薬開発への期待がかかる。特に、新種発見の報告が少ないモンゴルからの発見となったことは、生物多様性に関する研究や新たな有用物質の探索研究に繋がることも期待されるとしている。