東北大学の研究チームは、筑波大学と協力して、脳の酸化ストレスが糖尿病を発症することを見出し、そのメカニズムを解明した。治療へのアプローチにつながることが期待される。
以前から、 糖尿病では酸化ストレスが増加することが知られていたが、それがどのような役割を演じているかについては解明されていなかった。特に、脳の視床下部は代謝調節の司令塔として重要な機能を果たしていることから、糖尿病との関連が注目されていたが、視床下部での酸化ストレス増加の検討はそれを解明するアプローチの難しさもあって、十分な知見が得られていなかった。
今回の研究では、酸化ストレスを増加させるための方法として、酸化ストレスを抑えるために重要なセレンを含有する一群のタンパク質(セレノプロテイン群)に着目し、以前に研究チームが遺伝子組換え法により作出した、セレノプロテイン群合成に必須の遺伝子の発現を特異的に低下させることのできるマウスを利用した。
その結果、脳に酸化ストレスが蓄積すると、特に、全身の代謝調節に重要な視床下部領域の神経細胞数を減少させ、血糖降下ホルモンであるインスリンや肥満抑制ホルモンであるレプチンの作用を減弱させること、それらを通して全身に肥満や糖尿病を引き起こすことがわかった。さらに、脳の酸化ストレスを抑制することで、肥満や糖尿病を防ぐことが可能であることを明らかにした。
今回の研究成果は脳神経細胞の保護作用を介して、肥満や糖尿病の発症や増悪を防ぐことができることを示している。このことから、脳の酸化ストレス抑制に基づく、新しい予防・治療方法の開発が可能になるものと期待される。