東京農業大学応用生物科学部バイオサイエンス学科の尾畑やよい教授、農業・食品産業技術総合研究機構家畜胚生産ユニットの平尾雄二ユニット長らのグループが発表した論文が、米国科学アカデミー紀要の2016年最優秀賞に選ばれた。授与式は4月30日、米国ワシントンで行われる。
東京農業大学によると、尾畑教授らはマウスを使って哺乳類の胎仔内にある未分化の生殖細胞から試験管の中で機能的な卵子を作り出す技術を確立し、この方法で生まれた卵子細胞が受精後、正常にマウスとして育つことを確認した。
従来の培養方法では、卵子の分化を周囲の卵巣細胞が体内のようにサポートできなかったが、尾畑教授らはエストロジェンによって発現がコントロールされる遺伝子群が通常より多いことを突き止め、エストロジェンの阻害薬を培養液に添加して卵子形成を改善した。
この研究成果は卵子が分化するメカニズム解明に役立つほか、有用動物、希少動物の増産を可能にすると期待されている。米国科学アカデミーが発行する機関誌の米国科学アカデミー紀要に2016年7月、掲載された。
米国科学アカデミー紀要は1914年に創刊され、世界で最も引用されることが多い科学雑誌の1つに数えられている。扱う内容は生物学や物理学から社会科学までに及ぶ。
最優秀論文賞は1年間に掲載した論文の中から科学的な卓越性と独創性を反映した6つの論文が選出されている。