産学官連携を推進する埼玉工業大学では、工学部機械工学科河田直樹准教授(生産プロセス研究室)の画像処理による化粧板の色柄判別方法の研究成果を活かし、産学連携で「色柄センサー™」を共同開発した。
「色柄センサー™」は、建材の微妙な模様や質感の違いを識別できるセンサー機器で、材料の取り違えを防止して、人の目に頼っていた検査を自動化するもの。共同研究開発体制において、装置設計・製作、販売を株式会社ニシテックが、システム設計・ソフトウェア実装を株式会社イマジオムが担当。河田直樹准教授は画像処理による化粧板の色柄判別方法の研究成果を活かし、高精度判別の手法を開発して協力した。
化粧板は住宅や車両の内装、家具の表面などに使われる材料で、その多くは、樹脂を基材とし、その表面に印刷もしくは吹き付けによって色柄を発現させる層が形成されている。その意匠は多種多様であるため、化粧板を用いた製品の製造過程では、外観がよく似た板材を誤って組み合わせ、不良が生じる。従来は現場作業者のスキルによってこれらの意匠を見分けていたが、人間の感と経験に依存していることが課題だった。
この課題の解決方法として、対象板材の外観から多くの情報を取り出す機能を持つ「色柄センサー™」を開発し、画像処理と組み合わせる方法を考案。今回、MTシステムを利用する画像処理手法が、種々の意匠を判別する上で有用であることが判明した。「色柄センサー™」は、撮像素子とパターン照明装置を一体化させて、その周囲をケースで覆い、外乱光の影響を極力排除するようにしたユニット。測定対象物と接する面には、軟質樹脂製の遮光カバーを付け、少々の凹凸では隙間ができないようにして、測定者や測定対象の違いによるばらつきが生じないように配慮した。
今回の研究では、ハードウェアとしての「色柄センサー™」を開発するとともにセンサーから取得した信号を画像データとしてPCに取り込み、画像処理機能とパターン認識を可能とするMTシステムの機能を持つソフトウェアを開発した。
埼玉工業大学はAIやIoTに関する専攻をいち早く立ち上げるなど、社会ニーズへの先行した教育を推進している。また工業大学だが、文系学部である人間社会学部も併設し、幅広い分野からの要望に応えることができる体制もある。今回のように埼玉工業大学で生まれた研究シーズが、産学官交流により、多くの企業との連携において社会貢献できることを目指し、産学官交流センターでは、技術相談、共同研究、受託研究などの各企業のニーズに積極的に対応している。