京都大学の研究グループは、コロナ禍での認知症患者に対する身体拘束の実施割合を検証。コロナ患者受け入れ病院では緊急事態宣言以降の身体拘束実施率が増加していることが明らかになった。
コロナ禍において、コロナ陽性患者を受け入れている病院では、面会制限や医療資源の不足などで、従来通りのケアが難しくなった。特に認知症患者に対する包括的なケアは影響を受けやすい。認知症患者に対する身体拘束は、転倒予防などのメリットはあるが、倫理的に可能な限り避けるべきとされる。研究グループは、コロナ禍での認知症患者に対する身体拘束の実施割合の変化を検証した。
研究では日本の行政データベースを用いて、2019年1月~2021年7月(78週間)までに認知症ケアを受けた65歳以上の患者を抽出。コロナ患者受け入れ病院群(97,233症例)と非受け入れ病院群(58,623症例)の各々で、患者1,000症例当たりの身体拘束実施率を2週間毎に算出した。日本政府が発表した緊急事態宣言を契機に、それぞれの病院グループ内での身体拘束実施率がどう変化したか、「分割時系列解析」を用いて検証した。その結果、コロナ患者非受け入れ病院とは異なり、コロナ患者受け入れ病院では緊急事態宣言以降の身体拘束実施率の増加を認めた。
コロナ患者受け入れ病院で働く医療スタッフは、仕事量の増加、高い感染リスク、誹謗中傷など精神的身体的負担が大きく、今回の結果に影響を与えた可能性がある。今回の研究は感染第1波が焦点であり、その後状況の変化が生じたかもしれないが、今後の感染再拡大時に同様の影響が出る恐れもあるため、感染対策と並行して医療関係者の身体的精神的なケアも考慮すべきと指摘している。