海外旅行などで悩まされる時差ボケ。この原因を、お茶の水女子大学・京都大学の研究グループが数学とコンピュータによるシミュレーションで解明した。
時差ボケは、時差によって昼夜のリズムが変わったときに、体内時計のリズムが乱れることで起こる。体内時計は体内の細胞が個々に持っているが、それらを束ねるのが脳内の時計細胞集団だ。時計細胞はそれぞれ約24時間周期で遺伝子発現を繰り返しており、リズムを合わせて体内時計を機能させている。研究グループは、このリズム集団の振る舞いを数式で表し、時差が与えられた際のリズム予測を行った。
その結果、現地時間が遅れる(1日が長くなる)時差では、時計細胞のリズムは集団でよくそろったままで、数日で昼夜のリズムに合わせることができた。一方、現地時間が早まる(1日が短くなる)時差では、集団のリズムがバラバラになり、昼夜のリズムにもなかなかタイミングを合わせることができず、時差ボケからの回復が長引いた。
これらの結果から、時計細胞のリズムがバラバラになることが時差ボケの大きな原因と考えた研究グループは、時差を小分けにして与えた場合をシミュレーションした。結果、リズムはバラバラにならず、時差からの回復が数日早まることが確認でき、その有効性はネズミを使った実験でも実証できた。
つまり、現地時間が早まる東向きの旅行時であれば、前日に早起きし、受ける時差を短くすることで、順応がスムーズになると説明されている。
今回用いられた手法は、シフト労働者の負担を軽減させるスケジュール作りに応用できるとも期待されている。