慶應義塾大学医学部放射線科学教室の陣崎雅弘教授らの研究グループは、東芝メディカルシステムズ株式会社をパートナーとして世界初の全身用320列面検出器型立位・座位CT(立位・座位CT)の開発に成功し、2017年5月から臨床研究を行うと発表した。

 CT(X線コンピューター断層撮影)は1970年初頭に登場して以来、多くの疾患の診断に活用されている。人は基本的に立った姿勢(立位)や座った姿勢(座位)で活動するが、従来のCTは横たわっている姿勢のみでしか撮影できないため、起き上がると悪化する病態や立位・座位でしか行えない機能の評価はできなかった。

 今回研究グループは,従来のCTでは縦置きになっていたガントリ(ドーナツ形状の架台)を横置きにし、上下動をさせることで、立位・座位での撮影が可能なCT装置を実現した。特に姿勢保持のための用具や座位撮影を可能にする座位撮影補助具を開発し、円滑な検査フローを組み立てた。320列の面検出器により、一回転を最速0.275秒のスキャン時間で最大160mmの幅を0.5㎜スライス厚で撮影できる。

 今回の装置は,従来方式ではできなかった全身撮影と軟部組織の評価が可能になる。また、高速回転が可能な面検出器を用いているため、同一部位を連続撮影することで、立位・座位での臓器や脊椎・関節の動態情報の収集も可能だ。

 このCTの導入により、①運動器疾患のような荷重がかかる病態の早期診断、②ヘルニア・臓器脱のような腹圧がかかることにより明らかになる病態の診断、③立位・座位での呼吸機能・循環動態の評価、④形成再建術の術前評価、⑤歩行機能などの多くの病態や機能の評価が可能になると期待されている。

慶應義塾大学

大学ジャーナルオンライン編集部

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