九州大学医学研究院耳鼻咽喉科学の中川尚志教授、同大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科の村上大輔助教、澤津橋基広講師らの研究グループは、スギ花粉症を短期間で治す新たな免役治療法を開発した。
日本人の30%以上が罹患しているといわれ、いまや国民病とも呼ばれるスギ花粉症。これまでにも皮下免疫療法や舌下免疫療法によって体質改善を行う方法が実用化されているものの、重い副作用の可能性があったり長い治療期間を要したりするといった課題があった。
そこで研究グループは、2010年から腸管免疫を利用した経口免疫療法の研究および治験を実施。腸管には多数の免疫細胞が存在するため、経口免疫治療は短期間で効果をあげることができると予想した。
こうして開発されたのが、カプセルを飲むという簡便な治療法だ。カプセルの中には、スギ抗原と多糖体の一種であるガラクトマンナンとの複合体が含有されており、これを花粉が飛散する前と飛散中の約2ヵ月間、毎日服用する。
同治療法では、標準的治療に比べて約6割の抗アレルギー薬を減らしても、鼻の症状や目の症状を軽減する効果が認められ、安全性も確認された。
研究グループは、スギ花粉症に限らず、アレルギー体質を改善する新しい治療につながる可能性があるとしている。
なお、同研究は和興フィルタテクノロジー株式会社および日本学術振興会の助成を受けて行われた。