東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科細胞生物学分野の石井智浩助教と中田隆夫教授の研究グループは、岡崎統合バイオサイエンスセンター、東京大学との共同研究で、光を用いて細胞内カルシウムシグナルを自在に操作する技術を開発したと発表しました。カルシウムイオンはほとんどすべての細胞において重要な役割を果たす細胞内シグナルで、受精、遺伝子発現、分泌、神経活動、筋収縮などさまざまな細胞機能を制御しています。同研究成果は、糖尿病等の内分泌に関わる疾患や高血圧・動脈硬化などの筋収縮に関わる疾患の研究に応用できる可能性があります。

以前から、カルシウムシグナルの役割を詳細に調べるために、特定の時間、特定の細胞局所においてカルシウムシグナルを効率よく誘導する技術の開発が求められていました。光は細胞へのダメージが少なく、時間的・空間的に自在に制御できることから、光によりカルシウムシグナルを誘導する人工タンパク質がこれまでにも報告されていますが、カルシウムシグナルの誘導効率が高くないことなど、大きく改善する必要がありました。

同研究グループは、青色光でカルシウムイオンチャネルを開閉できるBACCS(Blue light-activated Calcium Channel Switch、青色光活性化カルシウムチャネルスイッチ)を開発しました。実験により、BACCSは青色光により簡便に早く大きなカルシウムシグナルを誘導できること、特定の時間に特定の場所でカルシウムシグナルを誘導できること、さらに培養細胞・動物個体の両方に利用できることが確認されました。こうした特徴から、BACCSは広くさまざまな研究に利用可能で、多様な生命科学の研究の発展に貢献することが期待されます。

なお同研究成果は、2015年8月18日(英国時間)に国際科学誌「Nature Communications」オンライン版に掲載されます。

出典:【東京医科歯科大学】「光で細胞内カルシウムシグナルを自在に操る技術を開発」―カルシウムイオンが制御する多様な生命現象の理解の促進を期待―(PDF)

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