芝浦工業大学の二井信行教授らの研究チームは、ヒト血漿から無細胞DNA(cfDNA)を効率的に抽出・精製する開放型マイクロ流体装置を開発。これにより、がんなどの治療の際に、少量の血液サンプルでも効率的に病気や感染症を正確に診断ができる。

 がんなどの治療では事前検査として病変組織を採取し、生体組織診断を行う。この外科的な生検に代わり、血液などの体液を検査するリキッドバイオプシーが注目されており、主にcfDNAをバイオマーカーとして試料中の病原性DNAの有無が分かる。しかし、cfDNAはその存在量が少なく短いため、抽出・精製は困難な作業だった。また、一般的な「固相抽出法」ではDNAの基本単位である200塩基対(bp)以下のDNA断片が得られず、感度の高い検出方法が求められていた。

 研究チームは今回、「過渡等速電気泳動(tITP)」と呼ばれる方法を利用して、ヒト血漿サンプルから病原性DNAを検出する開放型流体システムを開発した。これにより、これまで難しかった血漿からのtITPを容易に成立させ、分離したcfDNA断片を正確に抽出することができる。tITPを経て分離・精製されたDNAはPCR(DNAの複製・増幅)可能なゲルの細片として簡単に抽出が可能だ。実証実験では、高い回収率、正確な分離、短鎖(100~200 bp)で微量のcfDNA断片に対する感度を示した。

 これにより、少量の血液サンプルから病気や感染症を患者への負担なく迅速に、治療段階ごとに繰り返し検査し正確に診断できる。現在、実用化に向けて、デバイスの準備から泳動・サンプル抽出までの過程を、ロボットにより自動化する試みが行われている。また、血液以外の尿などの体液からcfDNA抽出の試みをスタンフォード大学と引き続き共同で進めていくとしている。

論文情報:【Analytica Chimica Acta】A modular and reconfigurable open-channel gated device for the electrokinetic extraction of cell-free DNA assays

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