宮崎大学、慶應義塾大学、千葉大学の研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行が日本で起きた2020年1月から2021年5月と、流行以前の日本における自殺の理由の変化を分析。男性では主に仕事のストレスや孤独感、女性では家庭・健康・勤務問題による自殺が増加。自殺理由は男女で大きく異なっていた。

 分析は厚生労働省公表の自殺統計データ(警察庁集計)を使用。自殺者数が例年より統計学的に増加した場合を「超過死亡」と判定。分析期間中の自殺者総数は約3万人、うち自殺理由の判明者は約2万1,000人(男性64.7%)。

 分析では、7つの大項目(家庭問題、健康問題、経済・生活問題、勤務問題、男女問題、学校問題、その他)の全てで超過死亡のある月を認めた(超過死亡割合最大は2020年10月)。女性では、家庭問題、健康問題、勤務問題、その他の問題で各5ヵ月連続の超過死亡を認め、男性では学校問題での超過死亡はなかった。

 小項目別では、男性は「経済・生活」で失業、「勤務」で仕事の失敗、仕事疲れ、職場の人間関係、職場環境の変化、「その他」で孤独感・後追い・犯罪発覚等で主に超過死亡が見られた。

 同じく女性では、「家庭問題」で親子関係の不和、夫婦関係の不和、その他の家族関係の不和、子育ての悩み、介護・看病疲れ、「健康問題」で身体の病気、うつ病、統合失調症、アルコール依存症、その他の精神疾患、「学校問題」で学友とのトラブル、「その他」では後追いなどで主に超過死亡が見られた。

 今回の成果は、COVID-19流行後の自殺者増(特に女性の場合)に対して、増加した理由を解明することで、、性別ごとの適切な自殺予防策・政策の検討に寄与するものとしている。

論文情報:【JAMA Network Open】Reasons for Suicide during the COVID-19 Pandemicin Japan

大学ジャーナルオンライン編集部

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