東京女子医科大学病院の栄養サポート・チームは、31病院の入院患者を対象とした実態調査で、腸を使う経腸栄養の推進により、自宅退院率が向上し、死亡率も低くなるなど、生活の質や予後を良くする効果があることを明らかにした。

 入院患者の栄養は、腸を使う経腸栄養と、点滴などで栄養を与える経静脈栄養に大別される。経腸栄養は、腸を使って消化・吸収が行われ、消化管免疫が刺激され、腸と脳との連携である腸脳相関も機能して、健康を支える腸内細菌の働きも期待される。対して経静脈栄養では腸を使わないため、消化管免疫や腸脳相関、腸内細菌の働きもすべて得られないが、これまで患者に対する影響の科学的な調査は行われていなかった。

 研究チームは、国内31私立大学附属病院の管理栄養士らの協力を得て、入院中の絶食状況と入院期間、転帰(退院、入院の継続、死亡など)との因果関係について、14,172名の入院患者に前方視的観察研究を実施した。

 その結果、入院中の絶食期間が長期化するほど、在院日数の延長・体重減少・血液学的パラメータの低下を認め、死亡率が上昇し自宅退院率が低くなることが証明された。これにより、患者のQOL(生活の質)と病院経済(経済的節約等)にダメージを与えることが示唆された。

 また、絶食例(サンプル)では、経静脈栄養で、中期絶食群(静脈栄養使用率12%)よりも長期絶食群(同使用率63%)の方がカロリー・タンパク質・脂質の摂取量が多かったが、全体として予後不良だった。これは、経静脈栄養に対する経腸栄養療法の優位性を示している。

 今回の成果は、世界的に見ても貴重なデータであり、今後、適正な栄養療法の選択指標となることが期待されるとしている。

論文情報:【British Journal of Nutrition】Relationship between the fasting status during hospitalization, the length of hospital stay, and the outcome

東京女子医科大学

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